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第1813話(フレイン~アクセル視点)※

「はぃぃ……」  新人ヴァルキリーはすっかり怯えながら、這うように館に駆けて行った。 「フレイン、いきなり飛ばしてるねー。すごい殺気だなー」  ミューは後ろで呑気にペロペロキャンディーを咥えている。地面に転がっているヴァルキリーの生首を、爪先でちょん、と蹴っていた。 「まあ、こんな新人すぎるヴァルキリーを受付に置いておくのもどうかと思うけどー。僕たちの顔もわからないようなヴァルキリーは、まだ受付に置いちゃダメだよねー」 「今日で嫌でも覚えただろう。戦士(エインヘリヤル)の中には怒らせてはいけない人もいるって、ちゃんと教えておかないとね」 「それで? さっき言ってたアクセルの棺ってなにー? もしかしてヴァルキリーたちに持って行かれちゃったのー?」 「うん、そうなんだ」  待っているだけなのも時間がもったいないので、フレインは受付を抜けて奥にあるヴァルキリーの館に向かった。  ミューもキャンディーを舐めながら、一緒について来てくれた。 「あー、そうなんだー? 道理でめっちゃ怒ってると思ったよ」 「当たり前だよ。こんな暴挙、ヴァルキリー全員皆殺しにしても足りないくらいだ」 「皆殺しはいいけど、なんで持ってっちゃったのか気になるなー。死んでからも動く身体の研究でもしたかったのかなー?」 「……さあ? 何にせよ、アクセルは絶対に渡さない。早くうちに連れて帰らなきゃ……」  館では何やら騒ぎになっているようだったが、フレインは構わず館に突入した。  ――アクセル、もう少し待ってて。今お兄ちゃんが助けてあげるからね……! ***  ――あれ……?  ヴァルハラ上空を飛び回っていたと思っていたのに、いつの間にか全然違う場所に来ていた。  アクセルはスイーッと周囲を飛び回り、地上の様子を観察した。  ――ええと、ここは……ヴァルキリーの館の前、か……?  町のように巨大な館の門前には、受付と思しき簡易テントが張ってある。そこに三人の若いヴァルキリーが待機していた。

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