1813 / 2296
第1813話(フレイン~アクセル視点)※
「はぃぃ……」
新人ヴァルキリーはすっかり怯えながら、這うように館に駆けて行った。
「フレイン、いきなり飛ばしてるねー。すごい殺気だなー」
ミューは後ろで呑気にペロペロキャンディーを咥えている。地面に転がっているヴァルキリーの生首を、爪先でちょん、と蹴っていた。
「まあ、こんな新人すぎるヴァルキリーを受付に置いておくのもどうかと思うけどー。僕たちの顔もわからないようなヴァルキリーは、まだ受付に置いちゃダメだよねー」
「今日で嫌でも覚えただろう。戦士 の中には怒らせてはいけない人もいるって、ちゃんと教えておかないとね」
「それで? さっき言ってたアクセルの棺ってなにー? もしかしてヴァルキリーたちに持って行かれちゃったのー?」
「うん、そうなんだ」
待っているだけなのも時間がもったいないので、フレインは受付を抜けて奥にあるヴァルキリーの館に向かった。
ミューもキャンディーを舐めながら、一緒について来てくれた。
「あー、そうなんだー? 道理でめっちゃ怒ってると思ったよ」
「当たり前だよ。こんな暴挙、ヴァルキリー全員皆殺しにしても足りないくらいだ」
「皆殺しはいいけど、なんで持ってっちゃったのか気になるなー。死んでからも動く身体の研究でもしたかったのかなー?」
「……さあ? 何にせよ、アクセルは絶対に渡さない。早くうちに連れて帰らなきゃ……」
館では何やら騒ぎになっているようだったが、フレインは構わず館に突入した。
――アクセル、もう少し待ってて。今お兄ちゃんが助けてあげるからね……!
***
――あれ……?
ヴァルハラ上空を飛び回っていたと思っていたのに、いつの間にか全然違う場所に来ていた。
アクセルはスイーッと周囲を飛び回り、地上の様子を観察した。
――ええと、ここは……ヴァルキリーの館の前、か……?
町のように巨大な館の門前には、受付と思しき簡易テントが張ってある。そこに三人の若いヴァルキリーが待機していた。
ともだちにシェアしよう!

