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第1814話※

 そう言えば、トーナメントで引き分け失格になった時、アロイスと一緒にあそこまで文句を言いに行った覚えがある。今となっては懐かしい。アロイスは優勝できたのだろうか。  ――というか、まだ夢の中にいるのかな、俺……。  内臓をぐちゃぐちゃにされたから、復活に時間がかかっているのだろうか。  でも、こんなよくわからない夢を見るくらいなら、さっさと目覚めたい。  トーナメントが終わったからって、そこで生活が終わるわけではないし、何ならこの後狩りの引率も入っているのだ。やりたいこともたくさんあるし、いい加減現実に戻りたい。  やれやれ……と溜息をついていると、  ――あれ、兄上……?  受付のテントに、つかつかと歩み寄る人物がいた。  上からでも一目でわかる。白い片マントを翻した金髪の人物は、間違いなく兄・フレインだった。後ろからミューもついてきている。  夢の中で兄に会えたのが嬉しくて、アクセルはそこに下りて行って話しかけようとした。  ――兄上、何してるん……。  ところが、兄は目にも留まらぬ速さでヴァルキリー三人のうち二人の首をザックリ斬り落としてしまった。若い女性が相手でも容赦なかった。  いきなり目の前で血飛沫が上がり、ぎょっとして兄を見る。  ――あ……兄上!?  何してるんだよ、と止めようとしたのだが、どうやら兄の目にはこちらの姿は映っていないみたいだった。それどころか、側にいることすら認識していないようだった。  兄はブチ切れモード全開で、残ったヴァルキリーに太刀を向けている。 「悪いけど、私は今ものすごく機嫌が悪いんだ。口の利き方や態度には気を付けた方がいいよ」 「は、はひ……」 「で、アクセルの棺はどこにやったの? 早く返してくれないかな」 「え、な……」 「あの子は私の宝物だ。それを勝手に持って行くなんて、例え誰であっても許さない」  それを聞いて、アクセルは再度目を見開いた。  ――は……? 俺、ヴァルキリーに棺ごと攫われたのか?

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