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第1818話

「あー、なんか巫女とグロアの置き土産? 巫女がいなくなってから、透ノ国も放置状態だったでしょー? そこに彼女たちの研究の遺物が残ってたみたいよ」 「……彼女たちは一体何の研究をしていたのやら。それで、この身体に噂の最高傑作が残っているということですが……」 「あー、そうそう。どんな魂かは知らないけど、とりあえず活動できるくらいまで身体に定着させて、使い道がありそうなら使う方向でいくってー」  フロックがそんなことを言い出したので、アクセルの心臓は嫌な意味で跳ね上がった。  ――魂の定着って、そういうことだったのか……!?  では、身体を追い出された俺の魂はどうなる? 本来の身体を奪われたまま、ずっと幽霊のように彷徨っていなければならないのか? 会話もできず、触れることもできず、それどころか気付かれることもないまま、兄の近くでもどかしい日々を送らなくてはならないのか?  そんなの、絶対おかしい……! 「傑作の使い道はともかく、この身体に元々あった魂はどうしたのですか? 確か戦士(エインヘリヤル)として活躍していたはずですが」  ブリュンヒルデが怪訝に口を開いたら、フロックはどうでもよさげに答えた。 「あー、それはわかんないわー。何度調べても、この身体には最高傑作の魂しか残ってなかったのよねー。今頃オバケみたいにあちこち旅してるんじゃない?」 「……放置でいいんですか、それは? 妙な化け物に変異しなければいいのですが」 「変異はしないっしょ。魂だけの存在がそう長く保つわけないから、自然消滅すると思うわ」  ――えっ……!?  それを聞いて、サッと血の気が引いた。  このままだと俺は自然消滅してしまうのか? そんなの、彷徨う以前の問題だ。  ――ちょ……冗談じゃない! 今すぐ俺の身体を返せ!  アクセルは勢いに任せて自分の身体に飛び込んだ。  ぐーん……と世界がすげ変わり、ほとんど真っ白な空間に移動する。  何だか妙な心地だ。居心地はいいものの、まだちょっと足元がふわふわしているような気がする。 「……! きみは……」

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