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第1826話

 ――というか、そもそもこういうことって、ヴァルキリーの一存じゃ決められないんじゃないか? 他の神々はどう思ってるんだ……?  神々の事情は、アクセルにはわからない。  ただ、透ノ国は特殊な場所で、かつ重要なものがたくさん置き去りにされているから、新たに管理者が欲しいという気持ちは理解できる。  確かに、地下に集められていた研究資料だったり、地上に点在していた国々、周りの建物等、あのまま放置でいいんだろうかと思う部分は多かった。少なくとも、誰かしらの管理は必要だろう。  とはいえ、それを自分以外の誰かに押し付けるのは違うと思う。  あんな切り離された場所の管理なんてしたくない……という神々の思惑はわかるけど、自分たちがやりたくないことは他の誰かもやりたがらないものだ。  そんな面倒事の押し付けに利用されかけていたのかと思うと、何だか猛然と腹が立ってくる。死んでしまった最高傑作も可哀想だ。  アクセルは声を震わせながら、言った。 「……相変わらずあなた達は自分勝手ですね。こちらの都合なんて考えもしない。そんな人たちに利用されかけたのかと思うと、反吐が出ますよ」 「神とはそういうものです……。少なくとも、格下の者の都合など考えません。情けをかけることもありますが、それは神の厚意であり、絶対ではないのです……」 「そうですか。では、この場であなたが傷を癒せず見捨てられたとしても、それは神の勝手ということになりますね」  冷たくそう言ってやったら、シグルーンは少し視線を落とした。そしてやや投げやりな口調で頷いた。 「……そう、ですね。そこはわたくしも承知しています。所詮、わたくし達ヴァルキリーも使い捨ての存在ですから……ある意味、オーディン様の眷属(エインヘリヤル)と似たようなものかもしれません」 「……!」 「ですが、神々が望んでいるのならば、それを遂行するのがわたくし達の役目です……。特にオーディン様の命令は絶対ですので……失敗などあり得ませんわ……」  シグルーンがよろよろと大槍を構えた。もう戦える状態ではないのに、それでもなお任務を遂行しようとする意志には恐れ入る。

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