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第1829話

「あと、その日は僕も後ろからついて行っていいー? アクセルのことだから、またとんでもない大物を呼んでくると思うんだー」 「ちょ……そんな縁起でもないこと言わないでくれ。というか、ランキング一位の戦士が他人の狩りについて行っていいのか?」 「多分大丈夫―。だってアクセル以外はみんな新人の戦士なんでしょー? どうせ僕のことなんて誰も知らないよー。変な子供がついて来てるって思うだけだよー」 「……いや、それはそれでマズい気がするんだが」  新人が勘違いするのはともかく、やはり全然関係ない戦士が狩りについてくるのは問題だと思う。そんなことがまかり通るなら、兄も「じゃあ私も行く」と言ってついて来るだろうし、新人戦士も集中できないだろう。  そもそも、アクセル自身も仕事に集中できない。  ――狩り当日は、ミューたちがついて来る価値もないくらい簡単な場所を選ぼう……。  そんなことを考えながら、アクセルは兄の回復を待った。  大鎌を洗い終わったミューは「また美味しいご飯食べに行くねー」などと言いつつ、その場を去っていった。 「……アクセル」  ようやく兄が言葉を発したので、アクセルは肩越しに兄を見た。 「兄上、怪我は治ったか? もう大丈夫か?」 「うん、大丈夫だよ。ありがとう」  そう言いながらも兄は、背中から離れようとしなかった。  後ろからぎゅっとこちらを抱き締め、声を震わせて呟く。 「よかった……。お前が戻ってきてくれて、本当に……」 「ああ……そうだな。俺も戻ってこられてよかった。兄上も、死ななくてよかったよ」 「私のことはいいんだよ。私にとっては、お前の方が余程……」 「それは俺も同じだよ」  目覚めてすぐに兄が倒れた時は、心臓が止まるかと思った。  結果的には二人共無事で済んだけれど、こんなとんでもないトラブルを起こしてくれたヴァルキリーのことは絶対に許さない。いつか必ず落とし前をつけてやる。  そう心に誓い、アクセルは兄に手を差し伸べた。

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