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第1831話
まずコピーの墓の隣に盛り土をし、円を描くように周りに石を並べる。そして手頃な小枝を二本探してきて十字に結び、盛り土のてっぺんに立てた。これでおおよその形は完成だ。今度時間があったら、この十字架も大きな丸太を削って一から作ってやろう。その方が彼も喜ぶはずだ。
――生まれ変われたら、今度こそ幸せになれるといいな……。
そんなことを願いつつ、アクセルは二つの墓にそれぞれ花を供えた。出来上がった墓を見たら少し切なくなってきて、一人でこっそり鼻をすすった。
室内に戻り、洗面所で手を洗っていると、兄がタオルや衣類を抱えてやって来た。
「これ、明日洗濯に出すヤツね。お前も洗いたいものがあるなら籠に入れておきなさいよ」
「ああ、わかった。じゃあ明日は洗濯物を出しに行って、その間市場で買い物だな」
「あと、これからお風呂入れるから、今日は早めに休もう。いろんなことがあって疲れただろう?」
浴室に入り、せっせと風呂を沸かしている兄。
そんな兄を、アクセルはぼんやりと眺めた。
――本当に、いつもと同じ日常だ……。
同じ家に住み、一緒に食事して家事を分担して、洗濯物を出しに行ったり、市場で買い物したり。そんな当たり前の日常が、如何に当たり前でなかったかを痛感する。
自分たちは死なないから――例え死んでも棺に入れば復活できるから――などと、楽観視していてはいけないのだ。これから先も、思いもよらないことはいくらでも起こり得るのだから、もっと命や時間を大切にしなくてはならないのだ。
「兄上……」
そう思ったら感情が溢れて来て、アクセルは後ろからそっと抱きついた。
兄は少し驚いたようだったが、すぐに柔らかく微笑んでくれた。
「ふふ、どうしたの? 急に甘えたくなっちゃった?」
「いや……まあ、その……そんなところだ」
「そっか。でも気持ちはよくわかる。私もお前が帰ってきてくれて、すごくホッとしてるもの」
首を捻り、兄が軽く口付けてくれる。小鳥が啄むような短いキスだったが、それだけでもアクセルにとっては幸せだった。
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