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第1832話

 もっと触れてくれないかなと思ったのだが、 「お楽しみは後にしよう。先にお風呂に入ってスッキリしたいよね」  と、やんわりとこちらをいなしてきた。  仕方がないので、アクセルもバスタブに溜まっていくお湯を一緒に眺めた。 「あ、そう言えば……俺、勢いのままヴァルキリーたちに『透ノ国を管理してやる』って言っちゃったんだ」 「……え?」 「そうでもしないと解放してくれないと思って。兄上も瀕死の状態だったし、これ以上あそこに拘束されたくなかったんだ」 「…………」 「でも、任せるからには俺たちの好きにさせてもらうって言っといたからな。月に一回くらいのペースで行って、問題ないか見て回って帰ってくるのでいいだろ? そうやって少しずつ地下に残されたものとか、他の土地とかを整理していけば」 「……そうだね」  兄は小さく微笑み、一度キュッとコックをひねってお湯を止めた。そして見慣れない入浴剤をたっぷり入れ、再びシャワーでお湯を溜め始めた。今度は水面を叩くようにお湯を注いでいたが、しばらくすると入浴剤からモコモコ泡が立ってきた。 「うわ、すごい……何だこれ」 「市場に売ってた入浴剤だよ。面白そうだったから買ってみたんだ。いつかお前と使えたらいいなと思って」 「そうなのか」 「さ、一緒に入ろうか」  兄に誘われたので、アクセルは服を脱いで全裸になった。兄も一緒に全裸になった。服を着ていると細身に見えるが、脱ぐと相変わらずいい身体をしていらっしゃる。  まず軽く髪と身体を洗い、それからモコモコしている湯舟に浸かった。  表面は細かな泡に覆われていたが、その下は温かいお湯だったのでゆっくり寛ぐことができた。いつもよりちょっとゴージャスな気分にもなれた。 「兄上……」  アクセルはバスタブに寄りかかり、丁寧に全身を洗っている兄に話しかけた。 「あの、兄上……怒ってるか?」 「何をだい?」 「その……透ノ国の管理を承諾しちゃったこと……」 「ああそれね。別に怒ってはいないよ」  ザーッと頭からシャワーを浴び、にこりと微笑んでくる。

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