1835 / 2296
第1835話
「……え、兄上も身投げ?」
兄上は別に問題ないのでは……と言おうとしたが、この兄ならそうしてしまうのも道理か……とも思った。
これだけ長く一緒にいると、兄の思考も性格もおおよそわかってくる。兄にとって最も大切なのは「弟・アクセル」だから、それ以外のものは――例え自分の命であっても、場合によってはどうなっても構わないと考えてしまうのだ。
だから「弟のいない世界だったら生きていても仕方がない」と思っているし、弟を取り戻せるのなら自分は死んでもいいと覚悟を決めているのだろう。命懸けでヴァルキリーたちに戦いを挑んだことがその証拠だ。
こちらとしては、万が一自分がいなくなっても兄は兄として幸せに暮らして欲しいのだが、多分その考えは兄には通じない。弟がいなくなった時点で、兄の幸せは永遠になくなったのと同然だからだ。
ならばこちらも、それ以上は言うまい。自分が死なないよう注意して生きるだけだ。
アクセルだって、大好きな兄とずっと一緒に暮らしていたいから。
「……わかったよ。それなら俺も気を付けないとな。俺のせいで兄上にまで身投げさせるわけにはいかないし」
「ふふ、そうだね。これからもいろんなことが起こるだろうけど、何があってもずっと一緒だよ」
兄がこちらを見つめてきた。アクセルも兄を見つめ返した。
そしてどちらからともなく顔を寄せ合い、ゆっくりと唇を重ねた。これまでしてきたどのキスよりも甘美で愛情に溢れていた」
「……あ」
唐突に兄が唇を離して顔を逸らした。何かと思い、アクセルは怪訝に尋ねた。
「兄上、どうしたんだ?」
「いやね……今日はお前から直接誘われない限り、手は出さないでおこうと思ってたんだ。もしお前が本調子じゃなかったら、強引にやらかすのも悪いしさ」
「それは……」
「でも、お前が側にいるとついその気になっちゃうね。なんか反応してきちゃった」
「え……」
兄に手を掴まれて股間に誘われたら、兄のそこは布越しでもわかるくらい熱を持って膨らんでいた。
ともだちにシェアしよう!

