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第1844話*
「えっ……!?」
とんでもないことを言われ、耳を疑った。
縛られていれば気絶しない……? 何だそれは。どういう理屈なんだ。
いや、確かに根本を拘束されている時は、苦しすぎて失神どころじゃなくなるのだが……。
――でもそんな……そんなの認めたら、拘束を肯定してるみたいじゃないか……!
ぞっとして否定しようとしたのだが、兄は「ふむ」と納得したように頷いた。
「なるほどねぇ……。お前は全てが自由な状態より、ある程度不自由でいた方がいいってことか。出した瞬間失神しちゃうことはよくあるけど、後ろだけでイってる時はそういうこと一度もないもんね」
「なっ……! ち、違……それは……!」
「考えてみれば、お前は昔からそうだったかもしれない。何かしらの不自由というか、障害というか……そういうものがあった方が、本領を発揮できるんだ。自由万歳な私とはまるで違う。今更だけど、それがお前の本質なのかもね」
「え、いや……あの……」
だんだん違う方向に話が進んでいって、アクセルは困惑して兄を見上げた。
確かに自分は、何かしらの障害――というか、「〇〇ができない」とか「もっと××になりたい」とかそういうコンプレックスを克服するために、日々努力していくタイプである。
密かな「負けん気」とでもいうのだろうか。兄みたいな天才型にはどう頑張っても勝てないから、ひたすら努力して少しでも追い付ければ……と思っているだけである。
それが全く違う意味で解釈されていて、何やらものすごく嫌な気配を感じた。
兄がこうやって「自分に都合よく」解釈している時は、その後とんでもない目に遭わされることが多いのだ。
「じゃあ、今度はこれ使ってみようか。ただの紐じゃ味気ないもんね」
「は……?」
そう言って、兄が指輪みたいなリングを見せつけてくる。普通の指輪より二回りくらい大きくて、内側に不自然なイボイボが取り付けられていた。
それを見た瞬間、アクセルはぎょっと目を剥いた。以前も少しだけ使われたことがあったが、あの時の感覚は決して忘れられない。
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