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第1852話
「回収はいいけどお前、またピピちゃんに守ってもらったんだね。後でちゃんとお礼言っておきなさいよ?」
「……え? いや、ピピを守ったのは俺の方なんだけど……」
「熊が現れてからはそうかもしれないけど、熊の追撃から守ってくれたのはピピちゃんでしょ? ピピちゃんが熊の気配に気付かないはずないもの。お前が呑気に気を緩めてるから、ピピちゃんが庇ってくれたんだ」
「は……?」
「多分ピピちゃんは、後ろから熊が追いかけてくるのも全部わかってたんだろうね。わかってたけど、逃げたらお前が死んじゃうと思ったから、わざと自分が盾になったんだ。熊の不意打ちをモロに受けたら、どんなに鍛えられた戦士でも大怪我は免れない。当たり所が悪ければ即死もあり得る。それを危惧してたんだろう」
「……!」
「ホントにいい子だなぁ、ピピちゃんは。主人の不注意を、身体を張ってカバーしてくれるペットの鏡だね」
そう言われて、アクセルの身体に衝撃が走った。
――そ、そうだったのか……!? てことは、ピピが怪我したのは俺のせい……?
確かに、少し変だなとは思っていたのだ。
うさぎは元来臆病な生き物で、耳もいいから獣の気配に敏感である。あんな大きな熊が近づいて来たら気が付かないはずがないし、攻撃を受けるまで呑気にその場に留まるようなこともしない。
にもかかわらずピピが逃げなかったのは、ただ飼い主を守りたかったからで……。
「ピピ……!」
アクセルはリビングを飛び出し、うさぎ小屋で寝そべっているピピに走り寄った。
ピピは何事かとこちらに顔を向けた。
「ピピ、ごめん……。俺、あの時完全に油断してて……」
「ぴ……?」
「……いや、違うな。ありがとう、ピピ。きみのおかげで生き延びることができたよ。きみは命の恩人だ」
「ぴー♪」
するとピピは、嬉しそうに耳をパタパタさせた。ふわふわの身体をすり寄せ、たどたどしい口調でこう言ってくる。
「ピピ、アクセルすき。アクセルまもれて、まんぞく」
「ああ、本当にありがとう。ピピがいてくれてよかったよ」
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