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第1853話
感謝の気持ちを込めて優しく撫でてやったら、ピピは満足げにじゃれついてきた。
今日の夕飯は、ピピの好物を作ってやろう。兄は猪の塊肉を煮込んでいたが、それとは別に野菜スープを作ろうと思う。
とりあえず一度家に戻り、兄に先程の熊回収を手伝ってもらうことにした。
台車を転がしながら熊を倒した場所に戻ったら、獣臭い血の匂いが鼻についた。
胴体と一緒に切り落とした前足も回収しようと思ったのだが、何故か左右どちらの前足もなくなってしまっていた。もしかしたら、獲物の匂いを嗅ぎつけたオオカミに持っていかれてしまったのかもしれない。ちょっと残念だ。
「それにしても、なかなか大きな熊だね。捌いたら結構な量のお肉がとれそう」
「だろう? しばらくは肉料理に困らないぞ」
「でも、前足盗られちゃったのは残念だなぁ。あそこもお肉が詰まってる部位なのに」
「……仕方ないさ。他にも美味しい部位はあるから、それで我慢しよう」
熊の身体を台車に乗せ、急いで家まで戻る。
兄が「私が捌いておくね」と言ってくれたので、アクセルは台車の片付けをした。熊の血が沁み込んでいたので、水洗いしてブラシで念入りに擦る。
水仕事をしていたら露天風呂のことも気になってきて、ついでにそちらも掃除した。
そしてピカピカになった露天風呂に温かい湯を張り、ピピに声をかける。
「ピピ、お風呂にしないか?」
「ぴ?」
「汚れも溜まってるだろうし、一緒に綺麗にしよう。熊の臭いも落としたいだろ?」
「ぴー♪」
ピピが湯舟に入って来たので、アクセルも裸になって一緒に全身を洗った。
ピピの身体に石鹸をつけて柔らかいスポンジで擦ってやったら、案の定細かい汚れがだくさん流れてきた。
「あー、いいなぁ。お兄ちゃんが熊を捌いている間に、お前たちはお風呂かぁ」
兄は熊の毛皮を引っぺがし、臓物や骨を綺麗に取り除いて肉を部位ごとに切り分けているところだった。
アクセルはピピの上から綺麗なお湯をかけながら、言った。
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