1854 / 2296

第1854話

「兄上も後で入ればいいじゃないか。というか、兄上が入ったらお湯が熊の血だらけになりかねないだろ。だから最後に入ってくれ」 「もー、お兄ちゃんの扱いがザツ~! お前、時々私に対して適当になるよね」 「ええ……? そんなこと言われても……じゃあ他にどうすればいいんだ?」 「はいはい、いいですよ別に。私はおうちのシャワー浴びるから」  兄はからかうように笑い、部位ごとに捌いた熊肉をキッチンに運んでいった。  骨や臓物はその場に放置されていたので、後で肥料にでもするつもりなのかもしれない。毛皮も後でなめして、市場にでも売りに行くか。  ――それにしても、当日の狩り場どうしようかな……。なかなかちょうどいい場所が見つからない……。  自分が初めて狩りの引率をされた時は、ランゴバルトが好きなように進んで行ってしまったので全く参考にならない。  どの山に入ったのかも未だによくわかっていないし、ロクに指導もされていないのに一人一体獲物を仕留めてこいだの、罠を仕掛けてこいだの、いろいろなムチャ振りをされたものだ。  それで大型の猪に襲われて、ピピを庇いながら何とか倒したのに、今度は逆ギレしたランゴバルトに殺されかけて……。  ――今思えば、結構すごいことやられてたな、俺……。  あんなんでも狩りの引率になるのなら、そこまで真面目に考えなくてもいいのかもしれない。狩りの場所だけ適当に決めて、後はその場のノリで散策していけばいいのではないか。  何から何まで指導されても自分で考える余地がなくなってしまうし、ある程度はそれぞれの自由に任せた方がいいような気がする。新人とはいえ、ヴァルハラに招かれるレベルの戦士なんだし。  そんなことを考えながら、アクセルは自分の身体も洗った。  全身の汚れを落とし、綺麗な湯を浴び、清潔なタオルで水分を拭き取る。ピピの身体も拭いてブラシで毛並みを整えてやったら、古くなった毛がもっさりと取れた。たまには毛繕いもしてやらないとダメなようだ。

ともだちにシェアしよう!