1857 / 2001
第1857話
「言いたいことはそれだけか? じゃあ狩り場に行くぞ」
くるりと背を向け、予定していた山に向かう。新人たちも、ぶつくさ言いながらついてきた。
――今日はあまりしつこい熊が出てこないといいんだが。
ちょうどいい場所が見つからなかったので、結局ピピと下見をした山に決めた。
熊に追撃されたこと以外は比較的安全だったし、ある程度は自由な行動も可能である。底なしの崖や噴火口みたいなあからさまに危険な場所もないし、多少ヘマをしても下山くらいはできるだろうと思った。
山に入り、少し開けた場所で足を止める。そしてその場に全員集めて、アクセルは言った。
「今日はここで狩りを行う。全員狩りの経験はあると思うんだが、ヴァルハラの獣は特殊なものが多いから油断せずに……」
「あーもう、そういう御託はいらねぇから」
と、またもや新人の一人が話を遮ってくる。
後で聞いたが、この髭面のベテラン風戦士は「ドム」というのだそうだ。山賊っぽい見た目だが、本当に生前は山賊だったのかもしれない。
「山に関しては、オレの右に出るものはいねぇ。テメェなんかに指導される筋合いはねぇよ。オレはオレで勝手にやらせてもらうぜ」
「ならオレも。狩りってのは気心知れたヤツと連携が取れなきゃ意味ねぇからな。小型の獣なら一人で十分だし、指導もいらねぇや」
「え、ちょっ……」
ドムともう一人の新人が勝手に輪を離れて行ってしまう。
急いで止めようとしたのだが彼らは思った以上に歩くのが速く、他の新人を置いて行くわけには……と迷っている間にあっという間に見えなくなってしまった。
――おいおい、嘘だろ……?
これ、新人に何かあったら全部俺の責任になるのか? こっちだって初めての狩りなのに、勘弁して欲しい。
というか、何で俺の狩りはいつも癖のある人と組まされてばかりなんだ。もう少し常識的な人と組ませて欲しいのだが。
「あー……行っちまったけど。どーすんだ、アレ?」
ブラッドが呆れた顔で尋ねてくる。
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