1858 / 2014

第1858話

「ああいう自由行動が許されるなら、オレも自由にしてていいのか?」 「……それは勘弁してくれ」  これ以上好き勝手動かれてはたまらない。  アクセルは溜息をつきつつ、残った二人に言った。 「……俺は彼らを捜してくる。きみたちはこの周辺を好きに探索していていい。が、念のためにこれを持っていてくれ」  と、緊急用の呼び出し鈴を渡す。兄に三つもらっていたので、ちょうどよかった。 「ピンチの時は、その鈴をどこかに叩きつけて割るんだ。そうすると、離れた仲間にも音色が届く。この辺は比較的安全な場所だから、余程のことがない限りピンチになることはないだろうが……一応山の中だし、気を付けていてくれ」 「お、おう……」 「じゃあ行ってくる」  早速山の奥に踏み込み、ドムたちの捜索を開始する。  とはいえ、広い山の中をただ歩いているだけで二人が見つかるとは思えなかった。今更ながら、ピピを連れてくればよかった……などと後悔した。  ――これで二人共見つからなかったらどうなるんだ……?  自力で下山できるなら問題ないが、万が一変な獣にやられでもしたら(こと)だ。責任問題になるのはもちろん、万が一彼らが獣に食われでもしたら復活できなくなる。せっかくヴァルハラに来たのに、数ヶ月も経たないうちに死ぬのも可哀想だ。  ――新人のうちは多かれ少なかれ、いろんなやらかしがあるしな……。  アクセルだって、ヴァルハラに来たばかりの頃はいろいろとやらかした。特別訓練に参加して間違って兄を殺してしまったり、変な罠にかかって知らない男たちに襲われかけたりもした。  そういう時でも、上位ランカー(主に兄)が上手いことカバーしてくれたおかげで、今のアクセルがあるのだ。  だから自分も、新人の失敗はなるべくカバーしてあげたい。今まで兄たちがやってくれたことを、代わりに新人にやってあげたい。  舐められまくっているのは不本意だが、それは単に向こうがこちらの実力を知らないだけだし……。

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