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第1867話(フレイン視点)

 ――なるほど、だいたいの事情は読めたな。  無知な新人とは恐ろしいものだ。オーディンの愛馬(スレイプニル)に攻撃したら、トラブルになるに決まっている。当たり前に殺されるか、よくて半殺しにされても文句は言えない。上位ランカーですら気を遣わなくてはならない神獣なのだから、新人ごときが敵うはずないだろう。  それで必死にアクセルが止めてくれたのに、そのアクセルを後ろから殴り殺すとか何事か。スレイプニルのオーラに当てられて攻撃的になってしまったのは理解できるが、だとしても許せない。本気で止めようとしなかったこの三人も同罪だ。  ――ああ、こいつら全員まとめてズタズタにしてやりたいなぁ……。  フレインは怒りを抑えるように、自分の腕を掴んだ。  以前のフレインなら、誰が何と言おうとその場で新人を滅多斬りにしていた。ズタズタに斬り裂いて拷問して殺した後は、二度と復活できないように火山に放り投げるか、山に捨てて獣に喰わせていただろう。  でも――そんなことをしたら、アクセルの方が悲しむ。「せっかく俺が助けた新人を、何で殺しちゃうんだよ」と怒られてしまう。  だから、ここは弟に免じてなるべく手は出さないでおいてやろう。自分にしてはかなり優しい対応だ、うん。 「なるほど、経緯はわかったよ。……ところで、アクセルは私の弟でね。真面目で優しくて、とにかく可愛い私の家族なんだ。知らなかったのかな?」 「し……知りませんでした……。し、知ってたら最初からこんなことには……」 「そうかい。なら、今日からちゃんと記憶に刻んでおきなさいね。私はアクセルの兄・フレイン。ヴァルハラでのランクは三位だ。うちの弟に何かしたら、今度こそ容赦しない。アクセルが許しても、私は決して許さない。全員嬲り殺した上で遺体を火山に放り込んでやるから、そのつもりでね」  凄んでみせたら、新人たちは顔面蒼白でこくこくと首を縦に振った。壊れたからくり人形みたいだった。

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