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第1869話(フレイン視点)

 フレインはさっさと帰宅し、作りかけの熊カレーを煮込み直すことにした。アクセルが帰ってきたら一緒に食べようと思っていたのに……何だか悲しい。 「ぴー」  そんなことを考えていたら、ベランダからピピが声をかけてきた。声色から「アクセルは?」と言っていた。 「あー……実はアクセルね、狩りでちょっとトラブルが起きて帰って来るの明日になっちゃったんだ」 「ぴぇ……?」 「気を付けろって言ったのにね。ホント、どこまでもお人好しな子で……。言うこと聞かない新人なんて見捨てればいいのに、そういうのができない子なんだよね……」 「ぴ……」 「ま……誰にでも優しいのがあの子の魅力でもあるんだけど。とにかく、アクセルは今棺でお休み中なんだ。今日は二人で過ごそうね、ピピちゃん」 「ぴー……」  なーんだ……とでも言うかのように、あっさりうさぎ小屋に戻っていくピピ。やはりフレインよりアクセルの方がいいらしい。  苦笑しつつ、フレインもリビングに戻った。そしてソファーに寝転び、ぼんやりと天井を眺める。  ――せっかく第六感が戻ったのに、これじゃ意味ないな……。  透ノ国に行った時、フレインも地下研究所で魂を吸収した。  アクセルに吸収された魂はおかしな方向に暴走してしまったが、フレインが吸収した方はこれといったトラブルもなく、順調に自分に馴染んでいるみたいだった。失われたと思っていた第六感も徐々に戻って来ているし、フレインにとっては吉兆だ。これがあれば、アクセルと離れている時もピンチかどうかがわかる。  でも……肝心な時に弟を守れないのでは意味がない。今回のトラブルはまさにそれだ。  ――というか、あんなの防ぎようがないんだけど……。  スレイプニルの気まぐれなんて予測できるはずないし、どんな新人がメンバーに加わるか――新人の過去を調べ、性格を吟味し、言動を精査し、この人なら多分大丈夫だろう……だなんて、いちいちジャッジしていられない。そんなことをしていたらキリがない。

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