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第1873話
「まあ、さすがに主犯格の……髭面の新人? は後ろからバッサリ斬っちゃったけど、致命傷は与えてないし。彼が死んだのは山で獣に喰われたからだし。それでも頭を回収して棺に入れてあげたんだから、かなり優しいよね」
「ま、まあな……。じゃあドムは、今棺の中にいるのか……」
「頭しかないから、蘇生できるかわからないけど。でも、それくらいの罰は許容範囲内でしょう。最初からお前の言うことに従っていれば、こんなことにはならなかったんだから」
「そう、かもな……」
スレイプニルの出現というイレギュラーがあったとはいえ、個人行動をしなければスレイプニルに矢を射るなどという愚行は侵さなかったであろう。
そういう意味では、自業自得と言えなくもない。
「というかお前、他の新人にはちゃんと謝ってもらった? 一応、復活したら家まで直接謝罪に来いって言ってあるんだけど、来なかったらどうなるかわかってるのかな?」
「あ、それは大丈夫だ。館の前で遭遇したから、そこで謝罪を受けたよ」
「……そう? ならいいけどね」
食事の準備ができ、テーブルにつく。熊カレーの美味しそうな匂いが食欲をそそった。
早速いただこうとしたところで、兄が思い出したように言った。
「ああ、そうだ。お前に渡しておきたいものがあったんだ」
「? 何だ?」
「これさ」
兄がポケットから貝殻を模した小物を差し出してくる。真っ白な二枚貝で、中には淡いブルーの小さな玉が入っていた。真珠とは違うようだが、何だろう。
「これは……?」
「運気が上がるお守りだよ。お前、外出時の運が壊滅的に悪いみたいだから。歩けばすぐトラブルに見舞われるし、変なヤツに絡まれる頻度高いし。今回の狩りも、変な新人が混じっていたせいでとんでもない目に遭ったでしょ? これはもう、早急に対策が必要だなと思って」
「う、うん……」
「だから、バルドル様にお願いして運気上昇のお守りを作ってもらったんだ。正確には『悪運から守ってくれる』効果みたいだけど……光の神様に直接力を込めてもらったから、間違いないと思うよ」
「え……」
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