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第1878話
「まあ、バルドル様の考えは私にはわからない。けど、透ノ国を世界樹 に繋げるのは結構ハードルが高いと思った方がいいかもね。どちらかというと転移ポートを設置したり、転移石みたいな小道具を使ったりする方が現実的かもしれない」
「そうか……」
「まあ、透ノ国を『神々のテーマパーク』みたいに作り替えれば、また評価も変わって来るだろうけどね。それはまたおいおい考えよう」
そんな話をしながら、世界樹 を通って家に戻った。
玄関から中に入ろうとしたら、玄関前に花やら酒やらがまとまって置かれてあるのを見つけた。
誰かが間違って捨てていったのかと思ったが、ゴミではなく新品のようだった。
「? 何だこれ?」
ガサガサと置かれているものを調べたら、花や酒に混じって手紙らしきメモが挟まっていた。そこにはこんなことが書かれていた。
『留守だったので、手土産だけ置いて帰ります。狩りでは本当にすみませんでした』
ああ、なるほど。狩りを引率した新人が置いて行ってくれたのか。手土産を用意してくれるとは、なかなか気が利いているではないか。
――俺なんか、手ぶらでバルドル様のところ行っちゃったのにな。
小さく笑っていると、兄は不満げに口を尖らせた。
「何なの、あいつら。直接謝りに来いって言ったのに、これじゃまるで事故現場にお供えしているみたいじゃないか。失礼しちゃうね」
「いいんだよ。頑張って直接家まで来てくれたんだ。俺たちがたまたま留守にしていただけさ」
「……もう、お前は相変わらずお人好しだな。もう少し怒ってもいいのに」
「別に怒るところじゃないだろ。とりあえず、これは花瓶に生けてくるよ」
早速アクセルは洗面所に行き、花束を解いて茎をちょうどいい長さに切り直した。そして水を入れた花瓶に生け、リビングのテーブルに置いておくことにした。花を飾るなんてだいぶ久しぶりな気がする。
「……で、こっちはどうする?」
兄が酒瓶を掲げて来る。ヴァルハラでは一般的なヤギの蜜酒のようだった。
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