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第1881話

 そう思って全身の筋肉を伸ばしていたら、兄が髪を拭きながら戻って来た。 「おや、ストレッチかい? 相変わらず真面目だね」 「今日はこれといった鍛錬をしてないからな。一日でもサボると身体が鈍りそうで」 「感心だねぇ。お前のそういうところ、昔から偉いなぁと思うよ」  兄がタオルを椅子に引っ掛け、こちらに近づいてくる。  立って前屈をしている背後に立たれて、少しばかり嫌な予感がした。 「運動不足っていうなら、寝る前に体幹鍛える運動でもするかい?」 「えっ……?」 「はい、両脚閉じて背筋を伸ばして、まずは右脚から……上げて」 「は、はい……!」  アクセルは言われるがまま、右の膝を直角に曲げて片脚立ちをした。  すごくシンプルなトレーニングだが、足の付け根や下腹部の筋肉が地味に刺激され、下半身も少しずつ鍛えられるのだ。  自分で言うのも何だが下半身もだいぶ強くなったし、これくらいなら楽勝……と思っていると、 「……あっ!」  無防備な尻をぎゅっと掴まれ、その刺激で危うく転倒しそうになった。  何とか堪えていたのだが、尻をいやらしく揉みしだかれ、尻の割れ目を指先でつつ……となぞられてしまい、思わず背筋がぞくぞくっと震えた。 「ちょ、ちょっと兄上、やめてくれ……!」 「ほら、足がグラグラしてるよ。片脚でも頑張って立っていなきゃ」 「だ、だったらそんな刺激……あっ!」 「ちなみに、私がいいって言う前に倒れちゃったらお仕置きだからね。逆に、頑張れたらご褒美あげる」 「え……!?」 「はい、あと一分ー」  耳元でそんなことを言われ、アクセルは歯を食いしばって刺激に耐えた。  ――うう……また兄上は、こんな理不尽なトレーニングを仕掛けて来て……。  片脚で一分立ち続ける程度なら楽勝だったのに。  自分で刺激を加えておいて「倒れたらお仕置き」だなんて意地悪すぎるだろう。  それにこの調子だと、どんなお仕置きをされるかわかったものじゃないし、ここで頑張らなかったら明日の鍛錬にも響きそうだ。

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