1882 / 2296

第1882話

「あと五秒……四、三、二、一……はい、OK」 「……はぁ」  右脚を下ろし、安堵の息を吐く。どうにか耐えられてよかった。  兄もにこりと微笑み、優しく頭を撫でてくれた。 「うん、ちゃんとできたね。偉い偉い」 「ま、まあな……」 「じゃあ、次は反対かな。左脚上げて」 「え……!? まだやるのか!?」 「当たり前じゃないか。鍛錬は左右平等にやらないと、バランス崩れちゃうでしょ。さっきは軸足だったけど、そうじゃない方の脚も同じくらい強くないといけないよ」 「それはそう、だけど……」 「はい、両脚閉じて、背筋を伸ばして、左脚を上げる……はい!」  掛け声と共に、ほとんど反射的に左脚を上げてしまう。  この分だと、また変な刺激を加えられつつ、一分以上片足立ちを強制させられるのだろう。  こういう時の兄は、何故か急に意地悪でスパルタになるから、アクセルとしては戸惑ってしまう。  ――でもまあ右脚の時は何とかなったし、左脚も大丈夫だろ……。  そう思って無心で耐えていたのだが、 「ああ、そうだ。ついでにこれも使おうか」 「……え? あ、ちょっ……!」  椅子に引っ掛けてあったタオルを目元に巻かれ、目隠しをされてしまう。  視界を奪われた途端バランス感覚が失われ、ほんの少しの刺激でもグラグラ身体が揺れてしまう。 「ちょ、兄上……! こんな、目隠しなんて無茶だ……!」 「はい、文句言わないの。これもトレーニングなんだから。体幹が強ければできるはずだよ」 「そんな……」 「はい、あと一分―」  そんなことを言いつつ、兄が尻を揉んでくる。  それだけでもぞくぞくしてしまうのに、目隠ししての片足立ちなんてできる気がしなかった。 「っ……ひあっ!」  その上、尻の割れ目からつつつ……と背中までなぞられてしまう。  視界が生きていれば我慢できたはずだが、何も見えない状態だと余計に感じてしまい、 「だ、だめ……兄上やめて……あっ!」  とうとう我慢できなくなり、早々に左脚を着いてしまう。片足立ちチャレンジ失敗だ。

ともだちにシェアしよう!