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第1896話
――あれ、今夜の食事会のために買ってきたものだったのか……?
だとすると、料理をするのは全部自分の役目になりそうだ。
それは別に構わないが、それならそうと早く言って欲しい。ちゃんとメニューを考えないといけないではないか。
「ミューやジークにも声をかけていたようなので、我々を巻き込んだ相談事でもあるのでしょう。何だか知りませんが、話だけは聞くつもりです」
「は、はあ」
「あなたのごちそう、楽しみにしていますよ」
「わ、わかりました……」
元貴族のユーベルに言われたら、手抜き料理など出せない。急いで材料を仕込んでおかなくては。
アクセルは早足で台車を転がし、家に戻った。
そして昼食を並べていた兄に詰め寄った。
「兄上、今夜ユーベル様たちが来るんだって?」
「ああ、うん。遊びに来てって誘いはしたね。何? 誰かに聞いたの?」
「洗濯物を取り込んでいたらユーベル様に会ったんだ。……ついでに、洗濯物の出し方でも苦言をもらったぞ。今後はマットレスみたいな大きなものは家で干すことにしよう」
「え、何で? 別にそんなの気にしなくていいじゃない」
「色や臭い移りが気になるんだと。生々しい臭いがついたら最悪って、かなりストレートに言われたんだからな。すごく恥ずかしかった」
ちょっと怒りながら言ったのだが、兄は涼しい顔でしれっとこう言ってきた。
「あー、それは単にユーベルが神経質なだけだよ。あの魔法のドラムの洗濯機能は完璧だから、臭い移りなんてしないもの。『なんか色や臭いが移る気がする』みたいなイメージで文句つけてるだけさ」
「……え、そうなのか?」
「そうだよ。何なら死合い後の血まみれ服とかでも、『わたくしのおしゃれ着に血の臭いがつく』なんてクレーム入れられるくらいなんだから。気にしないで使えばいいの」
「そ、そうか……」
一瞬納得しかけたが、それはそれとして、ある程度はユーベルのクレームも的を得ているのではないかと思う。
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