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第1897話

 シーツやマットレスで魔法のドラムをずっと占拠しているのは普通に迷惑だし、何より「またあいつら、家でお楽しみだったな」とバレるのは当たり前に恥ずかしい。その頻度が多かったら、「どんだけ乱れた生活を送ってるんだ」と嘲笑されてしまうではないか。 「いやでも、やっぱり大物は家で干すべきだと思う。兄上が面倒臭いって言うなら俺が洗濯するから、もう少しドラムの使用頻度を落とそう」 「えー……? でもお前、いっぱいやった後は失神しちゃって、次の日なかなか起きてこないじゃない。今日だって昼近くまで寝てたし。それまで汚れたものを放置しておけって言うの?」 「う……。で、でもそれは兄上がやりすぎるからで……」 「へー? 私のせいにするんだ? 確かに行為中はやりたい放題やってるけど、その後のケアはちゃんとしてるつもりだよ? お前がゆっくり休めるように、掃除も洗濯も全部きちんと終わらせてるよ? 起きた時の朝食だって用意してるのに、まだ文句があるわけ?」 「うう……」  そう言われると返す言葉がない。  結局、やらかした後始末をしているのはいつも兄で、アクセルは毎回寝ているだけなのだ。何だかんだ同じように楽しんでいるくせに、文句ばかり言うのはよろしくない。  仕方なくアクセルは、代案を示した。 「わ、わかった! じゃあ汚れてもいいようにベッドじゃなく浴室でやろう。それなら洗濯の頻度も落ちるだろ」 「ふーん……? お前がそう言うならそれでもいいけど、柔らかいベッドが恋しくなっても知らないからね」 「…………」  ……ものの数回で音を上げてしまいそうなのだが。  ――って、本題はこれじゃないだろ……!  いつまでも洗濯の話をしている場合ではない。  気を取り直し、アクセルはわざとらしく咳払いした。 「そ、それはともかく、今夜はお客さんが来るんだろ? そういうことはもっと早く言ってくれよ。物によっては今から材料仕込まなきゃいけないんだから」 「ああ、ごめんね。ご飯の時に言うつもりだったんだ」

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