1899 / 2296

第1899話

「わあ、ありがとう。お前の料理は美味しいから楽しみだよ。何を作ってくれるの?」 「それはこれから考える」  昼食を平らげ、食器を片付けた後、アクセルは早速兄が買ってきた食材を全てテーブルに並べた。  兄が購入したのは大量の肉と数種類の卵、乳製品に小麦粉である。案の定、野菜は極端に少なかった。  ――いや、バランス悪すぎだろこれ……。  ある程度は野菜もないと、彩りがなくなってしまう。茶色一色のメニューを出したら、またユーベルに嫌味を言われそうだ。  アクセルは急いで市場に走り、ジャガイモやニンジン、トマトにピーマン等の野菜を買い足した。  そして家に戻ると、すぐさまキッチンで食材を切り、下ごしらえをして水からじっくり煮込んだ。野菜をたっぷり煮込んだビーフシチューと、それを使ったハンバーググラタン。このふたつを作っておけばボリューム的には十分だろう。  念のため、「足りない」と言われた時用に鶏肉も一口大に切り、すりおろし生姜やニンニク、醤油で下味をつけておいた。上位ランカー(特に兄やミュー)は食欲も並外れているので、メインの他に唐揚げも必要になるかもしれない。  ――あ、そう言えば……。  食料庫を開けた時にひとつ気になることがあったので、念のため兄に聞いてみた。 「兄上、酒は飲む予定あるか?」 「ああ、多分みんな飲むと思うよ。あれ、お酒なかったっけ?」 「いや、あることはあるんだが……さすがにこれを出すわけにはいかないんじゃないか?」  アクセルはお詫びの印としていただいた酒瓶を示した。先日、狩りの時にやらかした新人が花束と一緒に置いて行ったものだ。  すると兄は愉快そうに笑い、顎に手を当ててこんなことを言い出した。 「あー、それか。怪しさ満点のヤツ、まだ飲んでなかったや。みんなに毒見させてみる?」 「……いや、それはダメだろ。万が一何かがあったらどうするんだよ」 「大丈夫じゃない? あれでもみんな優秀な上位ランカーだし。余程のことは起きないでしょ」 「そういう問題じゃ……」

ともだちにシェアしよう!