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第1903話

 兄上にも困ったものだ……と内心嘆きつつ、アクセルはビーフシチューを温めて四人に出してやった。  ついでにピピの分も鍋によそい、庭に置いておいた。  本当は自分もピピと一緒に食事したかったが、この調子じゃゆっくり腰を据えて食事なんてできそうもない。給仕をしながらキッチンで軽くつまむのが関の山だ。  そんなアクセルの気持ちを余所に、兄たちは酒を飲みながら食事し、透ノ国に関する話をし、他にもいろんな世間話を繰り広げていた。  ビーフシチューの後は食休みの小さなレモンシャーベットを出し、一番のメインであるハンバーググラタンを出した。オーブンでじっくり焼いたので、我ながら美味しくできたと思う。自分で食べられないのが残念だ。 「は~、美味しかったー。デザートのケーキももらっちゃって最高だねー」  さんざん飲み食いし、ミューたちは帰宅することになった。デザートのレモンケーキは余ったので、ミューにお裾分けしてあげることにした。 「じゃあ、見返りが決まったら教えてくれ。真面目で働き者の下位ランカーを集めてやるからよ」 「うん、考えておくよ」 「見返りによっては、ユーベル歌劇団を提供してもかまいませんので。その場合は早めにお知らせください」  兄が玄関でお見送りしている間、アクセルはせっせとリビングの片付けをしていた。彼らが飲み食いした食器をまとめて洗い、食事の残りを整理し、テーブルを綺麗に拭く。  給仕係は大変だが、作った料理を全部綺麗に食べてくれるのが唯一の救いだ。 「ああ、食器は私が洗っておくからお前は食事しなさい。夕飯ちゃんと食べてないだろう?」 「いや、いい。給仕しながらキッチンでいろいろつまんだから」  それに、今はもう夜十時を過ぎている。こんな遅くに食事したら、胃もたれして眠れなくなりそうだ。  ビーフシチューの大鍋をスポンジで擦っていると、兄が話を振ってきた。 「ねえ、透ノ国のお手伝いをしてくれた報酬、何がいいと思う? ケータリングって結構いいアイデアだと思うんだけどなぁ」

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