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第1904話

「……またその話か? さすがにケータリングはできないよ。そんなことしてたら時間がいくらあっても足りないじゃないか。鍛錬もできなくなるし」 「えー、だめ? じゃあどうする? みんなの言う通り、さすがに見返りナシでお手伝いに来てはくれないよ?」 「武器錬成に使う玉鋼でも提供してやればいいんじゃないか? そっちの方が下位ランカーにとっては嬉しいだろ」  自力ではなかなか採りに行けないし……と言ったら、兄は難しい顔で首をかしげた。 「確かによさそうだけど、その玉鋼は誰が採りに行くの? 人数によっては大変なことになりそうだけど」 「それは……」 「私たちですら、玉鋼を採りに行く時はそこそこの命懸けなんだ。そのくせ、成果は言うほどたいしたことない。ケータリングより遥かに大変そうだよ」 「…………」  アクセルは洗い物をしながら考えた。  ――確かに、今まではたいした収穫もなく終わることが多かった……けど。  こちらだって、少しは強くなったのだ。今まではガーディアンと遭遇しないよう細心の注意を払っていたけれど、今なら彼らを打ち倒して先に進めるかもしれない。  何だかんだ最深部には行ったことがないし、調査がてら玉鋼集めに行くのも楽しそうだ。 「じゃあ俺、近いうちに玉鋼採集に行ってくるよ」 「あれ、本当に行くつもりなの?」 「しばらく材料採集してなかったからな。自分がどこまで潜れるようになったのかも気になるし、玉鋼が採れるかも確認しておきたいんだ」 「そうかい? じゃあ私も一緒に行こうかな」 「……え、兄上も? 別に俺一人で大丈夫だぞ」 「とか言って、罠にかかるのがお前だからね。特に初めての場所は変なところで引っ掛かって、帰って来られなくなる可能性が高い。そうなったらお兄ちゃん、心配でいても立ってもいられないよ」 「う……。それはそうかもしれないけど、何をするにも兄上がいないとダメっていうのも、それはそれで恥ずかしいんだが」

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