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第1905話
「何言ってるのさ。自分が恥ずかしいのと罠にかかって死ぬのと、どっちがいいの? 比べるまでもないでしょ」
「うう……」
「初めの一回だけなんだから、恥ずかしくても我慢しなさい。遺体を回収できなかったら死に別れになっちゃうんだ。私はそんなの御免だよ」
「…………」
「わかった? お返事は?」
「はい、兄上……」
仕方なく渋々頷く。
兄の言いたいことはわかるのだ。アクセルだって、兄と死に別れるのは嫌だ。
とはいえ、やっぱりちょっと過保護じゃないかなと思ってしまう。そこまで心配しなくても、アクセルだってある程度の自衛はできるはずだ。
新しい御守りももらったし、今回は何事もなく帰って来られると思うのだが……。
――しょうがない……玉鋼採掘デートだと解釈しよう……。
デートというにはあまりに泥臭いが、行ったら行ったでそれなりに楽しめそうだし……これ以上文句は言うまい。
アクセルは汚れを落とした食器や鍋を綺麗に水で濯ぎ、シンクの横に置いて乾かしておいた。
そして寝る準備をしてベッドに入ったのだが、その時も兄は無邪気にこんなことを言ってきた。
「玉鋼がダメだったら、今度こそケータリングしてね♪」
「……しつこいな、もう。というか、何でそんなにケータリングにこだわってるんだよ?」
「いやぁ、遠征先でお前の温かい料理が食べられたら最高だなーって。お前のご飯は世界で一番美味しいから、みんなも喜ぶと思うんだよね」
「……。……それだけ?」
「それだけって何? 食事って一番大事なことじゃない。仕事の活力にもなるし。……あ、玉鋼探しの時も美味しいお弁当を頼むよ」
「……はいはい」
結局は兄の単純な食い意地だったようだ。
完全に呆れてしまい、アクセルは兄に背を向けて掛け布団に潜り込んだ。
***
翌日、今度こそアクセルはいつも通り起床した。
顔を洗って普段着に着替え、庭で軽く走り込みを行う。ピピも並走してついてきてくれた。
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