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第1907話

 鍛錬を終えて家の中に戻り、軽くシャワーした後朝食を作る。  昨日さんざん食い尽くしたから、朝食分しか食料が残っていない。また市場に行かないとダメか……と思いつつ、残った材料でベーコンエッグを作る。  そんなことをしていると、兄が起きてきた。  キッチンで起き抜けの水を一杯飲むと、こちらを見て首をかしげる。 「何かあった?」 「えっ? 何かって、特に何もないが……」 「そう? 何か考えているみたいに見えたからさ、朝の鍛錬中に何かあったのかと思って」 「あー……いや、本当にたいしたことはないんだ。ドムが訪ねてきただけで」  そう答えたら、兄は軽く眉を顰めてきた。 「ドム……ってもしかして、狩りの時にお前を殺した髭面の新人?」 「あ、ああ……。でも謝りに来ただけだからな! 本当に何もなかったから、心配しないでくれよ? 間違っても、捜し出して斬ったりしないように」 「そんな面倒なことしないけど。ふーん……? 謝りに来たんだ? 今更ねぇ……?」  何か含みのある口調だった。  不安になったのでアクセルはもう一度「大丈夫だから!」と念を押し、兄に顔を洗ってくるよう促した。  ――これだから兄上を怒らせると怖いって言われるんだよ……。  こちらを心配して可愛がってくれるのは嬉しいが、だからといって不安材料を片っ端から排除して欲しいわけではない。兄のこういう過激な性格は一体誰の影響なんだろうか。  もっとも、兄から言わせると自分はお人好しすぎて逆に困るらしいけど。  やれやれ……と溜息をついていると、兄が戻ってきた。  アクセルは出来上がったベーコンエッグをテーブルに並べ、焼き立てのトーストとコーヒーも一緒に出してあげた。  次にベランダに通じる窓を開け、ピピ用に作ったフレンチトーストとヨーグルトも出してやる。 「これ食べたら、玉鋼探しに行くかい?」 「いや、その前に市場に行きたい。昨日料理しすぎて食料が足りなくなってしまった。このままじゃお弁当も作れないしな」 「わかったよ。じゃあ市場で軽く買い物して、それから発掘に行ってみようか」

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