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第1910話
――素振りが上手くいかなかったから、焦ってるんだろうな……。あの程度のブレなら、すぐに取り戻せるはずだが……。
何度目かの溜息をつく。
兄のせいにはしたくない……が、兄の気まぐれにつき合っているせいで、鍛錬の時間が削れているのも事実だ。
昨日だって抱き潰されて昼まで寝てしまったし、その後は食事の準備でずっとバタバタしっぱなしだった。武器にすら触っていない気がする。戦士としてそれはさすがにマズい。
――というか、兄上は何でずっと強さをキープできるんだ……? 本気で鍛錬しているところなんて、数えるくらいしか見たことないぞ……?
以前疑問に思って聞いた時、「ながら鍛錬してるんだよ」などと言われたが、イマイチよくわからなかった。
ゴロゴロしているように見えて腹筋に力を入れているとか、椅子に座っているように見えてギリギリで空中椅子をしているとか、そういうことだろうか。
アクセルはどちらかというとながら作業は苦手で、鍛錬なら鍛錬、食事なら食事、とメリハリをつけた方が結果も出やすい。
だから兄のやり方は真似できないし、他のことをしながらでも鍛錬できている兄を羨ましく思ってしまう。
――こういうところでも、俺と兄上は全然違うのか……。何だかなぁ……。
再びはぁ……と溜息をつく。
しばらく悶々と歩いていたところでズシン……というわずかな地響きが聞こえ、アクセルはハッと我に返った。
緊張しながら岩陰に隠れて様子を窺っていると、ガーディアンと思しきゴーレムが目の前を通り過ぎていった。気配を殺していたので、一応気付かれずに済んだ。
――イカン、余計なことを考えている場合じゃなかった。ガーディアンが出現し始める深さになってきているんだ……。
一体目のガーディアンをやり過ごし、足音を立てずこっそり先へ進む。
とりあえず、行けるところまで行ってみよう。玉鋼以外にも何が採掘できるか気になる。
アクセルは周囲に気を配りながら、更に採掘場の奥に足を踏み入れた。
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