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第1913話

 何メートルも進まないうちにまたもやガーディアンの足音が聞こえ、アクセルは岩陰に隠れた。何とかやり過ごすのには成功したが、こんな頻繁にエンカウントしていては進みにくくてかなわない。  もう撤退してしまおうか。時間はまだあるけど、これでは玉鋼を採掘するどころじゃない。  確かに岩肌にはイイ感じの玉鋼が埋まっていそうだけど、玉鋼を採ろうと壁を掘った途端、ガーディアンがすっ飛んできたら何もできないではないか。  こういうところでも、やっぱり兄と一緒がよかった……などと後悔してしまう。二人いればどちらかが採掘している間に、もう片方が見張りをできるのに。 「兄上……」  思わずポツリと呟いてしまい、慌てて口をつぐむ。声をガーディアンに聞かれたら大変だ。  ――さすがに情けなさすぎるだろ、俺……。もっとしっかりしないと……。  無理矢理自分を奮い立たせ、アクセルは先に進んだ。  ガーディアンとの遭遇も何とか躱しきり、何メートルか奥に進んだら、突然視界がぱあっと開けた。 「っ……」  急にまぶしくなったこともあり、反射的に顔をしかめてしまう。  一瞬間違えて外に出てきてしまったのかと思ったが、当然のことながらまだ洞窟の中だ。  ――何だここは……? ここが終着点なのか……?  深部とは思えないほど明るい。洞窟全体がキラキラ輝いていており、神秘的な雰囲気が漂っていた。  宝石のような結晶が壁中を覆っており、人の背丈以上もある結晶がそこかしこに点在している。  視界も開けており、ガーディアンと思しきゴーレムは徘徊していなさそうだった。  アクセルはゆっくり周辺を歩いてみた。  キラキラした結晶の中には、本物の宝石らしきものも埋まっており、赤や青など色とりどりの素材がより取り見取りだった。  少し進むと、一際大きな丸い球体が結晶の壁に埋まっているのを見つけた。  ――これ、魔石かな。武器加工に使えるやつ……。

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