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第1915話(フレイン視点)

 同じ道を五分後から追いかけているのだから、そろそろ追い付いてもおかしくない。  もしくは、引き返してくる弟とばったり遭遇するはずだ。ここまでの道は一本道だったから、迷子になりようがない。  それなのに、何故アクセルと会えないのだろう……。  ――どこかで分かれ道を見落とした? いや、そんなことないはずなんだけどな……。  うーん……と、顎に手を当てて考える。  まあこの辺は薄暗いし、うっかり道を間違えた可能性は考えられなくもない。  となると、どこかで行き違いになってしまったわけで、このまま進んでも合流できないと思われる。それは大いに困る。  ――アクセル、どこにいるんだい……?  フレインは気持ちを集中させ、弟の気配を探った。  透ノ国で失った力を取り戻して以来、元々あった第六感も戻ってきている。例え物理的な距離があったとしても、弟が今どうしているかくらいなら直感でわかるようになった。  さて、アクセルはどこだろう……? 迷子になって泣いていないといいけれど。 「……!?」  一瞬、妙な光景が見えて、フレインはパッと目を見開いた。  アクセルが何でもない場所で立ち止まり、困った顔で周囲をキョロキョロ見回している。  今にも泣きそうな顔をしており、進むのも進めない状況にあるみたいだった。  ……しかし、何をそんなに迷うことがあるんだろう? そのまま進めば地上に出られるのに。何なら、自分と合流できるのに。  ――何やってるんだ、あの子……?  半ば呆れながら、フレインは速足で洞窟を進んだ。同じ道を通っているんだから、このまま進めば必ずアクセルのところまで行ける。  少しカーブになっている場所を抜け、ゴツゴツした壁を通りすぎ、大きめの岩の角から登場してやった。 「アクセル」 「ひっ……!?」  驚愕に短く叫び、半ば飛び上がるようにして弟はズザザ……と自分と距離をとった。  ほとんど反射的に小太刀に手をかけていたが、現れたのが兄だとわかると、一気に緊張の糸が緩んだように見えた。

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