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第1917話(フレイン視点)
「……未熟な弟ですまない。玉鋼も全然持ち帰れなかったし、やっぱり最初から兄上と洞窟に入ればよかった……」
アクセルが深く項垂れている。何だかよくわからないが、不機嫌の後の落ち込みがやってきたみたいだ。弟は不機嫌になってこちらに八つ当たりした後、急に冷静になって自己嫌悪に陥り、謝ってくることが多い。
フレインは弟の目の前に、中身がたっぷり詰まった麻袋をドサッと置いた。
弟はハッとしてそれを見て、中を確認してまた目を丸くした。
「これ……」
「お前の代わりに採掘しておいたよ。お前のことだから、どうせガーディアンから逃げるのに精一杯で、玉鋼のことなんて忘れていると思ってね」
「…………」
「今更だから細かいことは言わないけど、私は最初から最後までお前の味方だよ。困ったことがあったらその場で言っていいし、お前のためだったら振る舞いも改善する。実際、お前に嫌だっていわれたから友人と一対一で遊ぶのもやめにしたし」
「それは……」
「もう『迷惑になるかも』とか『愛想を尽かされるかも』とか、考えなくていい。そんなこと言い出したら、お互い愛想を尽かして然るべきな出来事はたくさんあったもの。それでも何だかんだここまで上手くやれてきたんだから、これでいいんだ」
「兄上……」
何だかまた泣きそうな顔をしている。
この場で号泣されても困るので、フレインはあえて話をズラした。
「それと、おにぎりも豚汁もすごく美味しかったよ、ありがとう。あれ、まだ家に残ってる?」
「あ、ああ……。少し多めに作っておいたから……」
「じゃ、早く家に帰ろう。あのお弁当だけじゃ全然足りなくてさ」
そう言ったら、弟は呆気にとられたように玉鋼の麻袋を握り締めた。
気にせず採掘場を後にしたら、弟も当たり前のようについてきた。やっぱり、この距離感が一番心地よい。
――喧嘩してもすれ違っても、最終的にこうして一緒に家に帰れればOKだよね。
平凡な幸せを味わいながら、フレインは密かに微笑んだ。
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