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第1919話
よかった……と胸を撫で下ろす一方で、アクセルの頭には違う疑問が浮かんでいた。
――じゃあ、あの空間は一体なんだったんだ? あの魔石を持ち帰っていたらどうなっていたんだ?
考えてもわからないけど、気になるのは確かである。
兄と一緒に行動していればその謎も解けただろうに……本当に惜しいことをした。
おにぎりと豚汁を味わい、食器と弁当箱を片付ける。
アクセルはもう夕食いらないくらいお腹いっぱいになってしまったのだが、兄はまだ食べる気満々のようだった。
しょうがないから兄の分用に何か作るか……と食料庫を調べていたら、兄がそれを制してきた。
「いいよ、私は宴会場で何か食べてくるから。やる気があるなら、ピピちゃんの夕飯を作ってあげなさい」
「えっ? でも……」
「昨日も今日も飯炊きばかりじゃ嫌だろう? さすがにもうわがまま言えないから、私は私で何とかするよ」
「あ、いや……それは……」
「じゃ、行ってくるねー」
そう言って、兄は家を出て行ってしまった。
アクセルは複雑な気持ちで食料を集め、とりあえずピピの野菜スープを作ることにした。
――野菜スープを作るなら、一緒に兄上の分を作っても手間は変わらないんだけどな……。なんか気を遣わせてしまった……。
仕方なく、野菜スープに入れるニンジンや玉ねぎ、ジャガイモを切り刻む。ついでに熊の干し肉も細かく切って一緒に入れてやった。これを入れるとダシが出て美味しくなるのだ。
灰汁をとりながらグツグツ煮込んでいるところで、ふとガーディアンを倒した戦利品のことを思い出した。
――そういや、エネルギー源の魔石を持ち帰ってたんだっけ。あれ、兄上の御守りに加工できないかな。
どんなものなのかわからないから、とりあえずエルフの武器屋に持ち込んで鑑定してもらおう。万が一、悪いエネルギーが凝縮したものだったら御守りにできないし。
ピピのスープを完成させ、ベランダに出してやったらピピは大喜びですっ飛んできた。
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