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第1920話
その食べっぷりを横目で見ながら、アクセルは兄が採ってきてくれた玉鋼の仕分けをした。
数はそこまで多くないものの、どれもこれも粒揃いで上質な玉鋼ばかりである。やはり洞窟の深層部に入れば、それなりの質のものが手に入るみたいだ。……その代わり、危険は多いけど。
兄が帰ってくるまでまだ時間があるので、急いでエルフの武器屋まで行ってみた。
そしてガーディアンからドロップした魔石を鑑定してもらった。
「おや、これはなかなか珍しい魔石ですね」
「そうなんですか?」
「ええ、深層部のガーディアンしか持っていない魔石ですので。悪いものではないので、安心してお使いください」
「ありがとうございます。じゃあこれ、御守りに加工してもらえませんか? 明日また取りに来ますから」
そう言って、アクセルは魔石を預けてまた家に戻った。兄はまだ帰っていないようだった。
――これ、下手したら深夜に酔っぱらって帰ってくるパターンかもな……。
まあ、たまには好きにさせとこう……と思いかけたのだが、別方向の心配が襲ってきて急に不安になってきた。
万が一酔っぱらった勢いで浮気とか、ましてやお持ち帰りなんてされていたらどうしよう。もうそんなことはしないと信じたいけど、兄には前科があるから完全には信用しきれない。嫉妬で気が狂いそうだ。
「兄上……」
居てもたってもいられず、ササッと出掛ける支度をする。
急いで玄関から飛び出そうとしたところで、ふと冷静になって立ち止まった。
――いや待てよ……? ここで俺が宴会場に乗り込んだら、兄上のこと信用してないって思われたりするのか……?
それはそれで嫌だ。
兄はアクセルのためにいろいろと行動を見直してくれているのに、自分はいつまで経っても兄の浮気を心配している。それはものすごく失礼なことではないか。
何かというと兄に世話になり、さんざん甘やかしてもらっているくせに、兄が家に帰ってくるまで大人しく待つこともできないのか、自分は。
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