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第1922話
「あ、兄上、何を……?」
「いや、せっかくだから負荷をかけてあげようと思って。ずっと同じ重さじゃ筋肉への刺激にならないじゃない?」
「それは……」
「とりあえずこのまま、十回やってみようか」
「えっ!? 十回!?」
「まさかできないなんて言わないよね? お前も立派な上位ランカーなんだし」
「う……」
仕方なくアクセルは、何回か腕立て伏せを繰り返した。
最初の三回くらいはよかったのだが、四回目から早くも腕がぷるぷるしてきて、肩と腕を繋げている筋肉が痛んできた。
――うう……体重が倍になるとやっぱりキツい……。
でも、さすがにここで「できません」とも言えない。そんなことを言ったらどんなお仕置きをされるか、わかったものじゃない。
己を奮い立たせ、アクセルは何とか腕立て伏せ十回をクリアした。
最後の十回目なんかは腕が震えすぎて、カウントと同時にバタリと倒れてしまったくらいだ。
「ありゃ、潰れちゃった。そんなにキツかった?」
「キ、キツいです……。もうできません……」
「そうかい? じゃあ今度は私の番かな。お前は私の上で休んでていいよ」
そう言って、兄は床に手をついて腕立て伏せの姿勢をとった。
アクセルは言われるまま兄の背中に仰向けになり、ぐでぇ……と全体重を預けた。
「……お前、すごい乗り方してるね。まあいいけど」
兄が腕立て伏せを始める。
最初は何の気なしに背中に転がっていたのだが、しばらくしても腕立て伏せのペースが全く落ちていないことに気付き、アクセルは「えっ!?」と目を剥いた。
――え、嘘だろ……? 兄上にとってはこれでも余裕なのか……!?
いや、もともと腕の力は強い人だったけど、自分の二倍の体重がかかっているのにずっと続けられるってどういうことだ? しかも十回どころか二十、三十と続けているんだが!?
「兄上、あの……そんなに続けて大丈夫なのか? 無理してるんじゃ……」
「え、そんなことないよ。まだ余裕だからやってるだけ」
「……!?」
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