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第1934話(フレイン視点)

 物心ついていない時からアクセルは本当に「お兄ちゃんっ子」で、フレインが何かをしている時も勝手に後ろからついてくるような子だった。  トイレや風呂の時も後追いがひどくて、ちょっとでも姿が見えなくなるとわんわん泣いてしまうのが当たり前だった。  川に水を汲みに行くから留守番しててって言ったのに、勝手についてきて溺れそうになったこともある。  アクセル本人はほとんど覚えていないだろうけど、冗談抜きで昔から非常に手のかかる子だったのだ。  自分が「ながらトレーニング」ができるようになったのは、「トレーニングだけ」をしている時間がとれず、弟の世話を同時並行でしなければならなかったからに他ならない。  大人になった今でも根っこの部分は変わっておらず、一緒に出掛ける時は常に後ろからついてくるし、なかなか帰ってこないからとフレインを捜しに行って自分が迷子になることも多い。  何かというとすぐに落ち込むし、寂しくなってこちらを求めてしまうし、ヴァルハラに来ても全然変わらないなぁ……と、愛しさと呆れがごちゃ混ぜになってこみ上げてくる。 「……まあでも、お前はそのままでいいんだよ。お前がずっと変わらないでいてくれるからこそ、私もこのままでいられる。変に道を踏み外すこともない。私にとってお前は『碇』だから、ある程度手がかかる子でないと困るんだ」 「う……ん……」  アクセルが呻き声を漏らした。  こちらの話なんて聞こえていないはずなのに、まるで返事をするかのように声を上げてくる。そんなところも、可愛くてしょうがない。  フレインは優しく微笑みつつ、弟の耳元で囁いた。 「だからお前は、ずっと『お兄ちゃん大好き』でいてね。喧嘩しても一時的に離れちゃっても、ずっと私のこと尊敬し続けて。約束だよ」 「ん……兄上……」  意識はなくても、本能的に反応してこちらに抱きついてくる。  大事な宝物を優しく撫で、全身を綺麗にした後就寝用のジャージを着せてやった。  そしてベッドに寝かせてやり、自分はもう一度シャワーを浴びた。

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