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第1935話

「……!」  翌朝、アクセルはいつものようにバチッと目を覚ました。  むくっと身体を起こし、うーんと伸びをしたところで時計を確認してみる。一応、まだ朝六時くらいだったので少しホッとした。今日は寝坊せずに済んだみたいだ。 「……!」  兄は隣のベッドでまだ眠っている。  そういや昨日、欲望を処理できなくて困っていたら、兄が浴室に入って来たんだっけ。その流れで結局抱かれてしまって、無理に我慢していたらいつの間にか意識がなくなっていて……。 「…………」  念のため、自分の腰を軽く(さす)ってみる。痛くはなかった。  ――あれでも手加減してくれていたのか……。  失神するほど気持ちよかったのに、後遺症らしきものが特に残っていないのはそういうことだろう。朝もちゃんと起きられたし、兄のテクニックには本当に恐れ入る。  アクセルはそろりとベッドから抜け出し、顔を洗って服を着替えた。  そしてベランダから庭に出て、朝の準備体操を行った。 「ぴー」  ピピがやってきて、こちらにすり寄ってくる。  ふわふわの毛並みを撫でながら、アクセルは笑いかけた。 「おはよう、ピピ。なんか朝の鍛錬がすごく久しぶりな気がするよ」 「ぴー……」 「ここ最近、いろんなことがあってバタバタしてたからな。今日から真面目に鍛錬再開だ」  軽く庭をランニングし始めると、ピピも並走してついてきた。朝の日差しを浴びながらのランニングは、非常に気持ちがよかった。  続いて素振り、筋トレと、いつものメニューをこなしていく。  鍛錬しながら「今日やるべきことは……」と頭の中で考えていたのだが、自分のトレーニングの他に武器屋にも用事があることを思い出した。  ――あ、そうだ。武器屋に預けた例の魔石、ちゃんと加工できてるか見に行かなきゃ……。  兄の御守りにしようとしていたヤツ。危うく回収するのを忘れるところだった。  一通り鍛錬を終えたので、アクセルは室内に戻って汗を拭き、水分補給をしながら朝食を作った。

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