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第1937話
「うん、いいよ。でも知らない人が相手だから、そこまで盛り上がらないかも。どうせ下位ランカーだろうし」
「今更下位ランカーとマッチングするなんて珍しいよな。俺なんかずっとマッチングしないのに……その下位ランカーが羨ましいよ」
その後兄は自宅に直帰し、アクセルは武器屋に立ち寄った。
預けておいた魔石を回収するだけだったのだが、なかなか順番が回ってこなくてものすごく待たされてしまった。昨日の今日なのに、とんでもなく忙しそうだった。
――急に武器の注文が入ったのか? そんなこともあるんだな……。
ボーッとしたまま待ち続けるのも何なので、武器屋の前で筋トレしながら待つことにした。
スクワットしたり腕立て伏せをしたりしていたら、
「あれ、アクセル。久しぶりだね、元気?」
チェイニーに声をかけられた。
アクセルはトレーニングをやめ、正面から彼に向き直った。
「チェイニーか。きみも武器を注文しに来たのか?」
「まあそんなところ。さっきの死合い見てて、これはいろいろ強化しないとヤバいと思ってね」
「さっきの死合いって、スタジアムで行われていたヤツか? 随分盛り上がっていたようだったが……」
「そう、それ。この間入って来た新人戦士の死合いだったんだけどさ……それがもう、いろんな意味でヤバくて」
「ヤバいって? 何がどうヤバかったんだ?」
ルール無視とかがあったんだろうか……と予想していたら、チェイニーは声を潜めてこんなことを言ってきた。
「それがね……新しく入って来た連中、全員魔剣士だったんだよ」
「? 魔剣士……?」
「戦士は戦士でも、最初からバンバン魔法を使える連中さ。狂戦士モードとか関係なく風を発生させたり、周りを氷だらけにしたり、相手に火をつけたりできるんだ。さっきはそんなカオスな死合いが行われていたってわけ」
「えっ!? そうなのか?」
「そうだよ。もうブーイングもすごかったんだから」
予想の遥か上をいく答えだった。
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