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第1938話

 先程の死合いは盛り上がっていたのではなく、怒号に見舞われていただけだったのか。スタジアム外まで筒抜けのブーイングというのも、余程のものだが……。 「でも魔法って死合いで使っていいのか? ルール違反になりそうだが」 「それがヴァルキリーのストップが全然入らなくてさ。これはあくまでオレの予想なんだけど、ヴァルキリーは招いた新人にいきなり魔法の武器を与えたんじゃないかなって思ってる」 「ええっ!? そんなことがあり得るのか?」 「あくまで予想だけどね。でも可能性なら十分あると思うよ」  と、チェイニーが腰に手を当てる。 「正直、今の上位ランカーってちょっと強すぎるんだ。魔法に頼っている人はほぼいないし、狂戦士モードありで戦ったらヴァルキリーたちが相手でも多分負けない。長いことメンバーも変わっていないし、上位一桁の戦士たちが反乱を起こしたら、ヴァルキリー総出でも抑え込めないだろうね。だから新しく入って来た戦士に最初からチート級の魔法を与えて、今の環境に風穴を開けようと思ったんだよ、きっと」 「ええ……?」 「まあ事情はどうあれ、新人どもが魔法を使ってくるのは事実なわけで。だから対魔法の武器や、魔法を防御できる性能をつけてもらう人が増えたんだ。武器屋が急に混み始めたのはそれが理由かな」 「そ、そうだったのか……」  アクセルはもう一度、武器屋の中を覗いてみた。  相変わらずエルフたちは忙しそうに動いており、接客にまで手が回っていないようだった。  武器屋を利用している戦士たちもそれを承知しているのか、「武器預かり所」に設置してある籠に武器を放り込んで帰っていったり、強化が終わった武器を勝手に持ち帰ったりしている。もはやセルフサービスに近い。  ――そんなに大変なことになっていたのか……。最近死合いがなかったから、全然知らなかった……。  だとしたら、次に自分が戦う相手もその魔剣士である可能性が高い。兄も同様だ。  こうしちゃいられないと思い、アクセルはくるりと踵を返した。

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