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第1939話

「チェイニー、貴重な情報ありがとう。帰って対策を練ってみるよ」 「ああ、うん。アクセルの死合いって五日後だったよね? ちゃんと対策すれば強さ自体はたいしたことないから、絶対勝ちなよ? くれぐれも変な罠にかからないように」 「……変な罠?」 「いや……これもあくまで噂だけど、その新人たち、自分たちより上の戦士を魔法でボコボコにした挙句、見栄えのいい戦士を囲って辱めてるらしいんだ。ヴァルハラには女がいないからって、本当にやりたい放題やってるんだって」 「……!」 「アクセルはイケメンだから、負けたら絶対いいようにされると思って。そういうのはさすがに胸糞だから、ちゃんと勝ってわからせてやった方がいいよ」  チェイニーの言葉に、じわじわと不快感が這い上がってくる。  今の新人はそんなことまでしているのか。確かにヴァルハラでは「ランクが高い方が絶対」、「勝った者が正義」みたいな風潮があるけれど、だからといって何をしても許されるわけではない。やっていいことと悪いことはある。  それに話を聞く限り、新人たちが勝てているのはヴァルキリーが与えたチート級魔法のおかげだと思われる。自分で努力して得た力ならいざ知らず、苦労もせずに手に入れた魔法で連勝していても、そんなものは本当の強さではない。戦士としての実力はたかが知れている。  アクセルは軽く息を吐き、チェイニーに告げた。 「大丈夫だ、俺はそんな連中に負けたりしない。魔剣士だか何だか知らないが、ヴァルハラはそんな甘い場所じゃないってこと、新人にキッチリ教えてやる」 「アクセルならそういうと思ったよ。死合い、オレも見に行くから頑張ってね」 「ああ、もちろんだ」  そう言って、一度自宅に帰った。  家の庭では、珍しく兄が素振りの練習をしていた。 「おや、おかえり。預けてあったものは引き取れたかい?」 「そんなことより兄上、大変だ。次の死合いの相手、魔剣士かもしれないんだ」 「ああ、その話? そんなの私も知ってるよ。だからこうして鍛錬してるんじゃない」

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