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第1940話
「え、知ってたのか? いつの間に……」
「さっき郵便物を持ってきてくれた子に聞いたの。この間入って来た新人は魔法をバンバン使って来てヤバいから、フレイン様も気を付けた方がいいですよってさ」
「そ、そうか……。やっぱりもう噂になってるんだな……」
そういったきな臭い噂は、回るのも早い。だから武器屋があんなに混んでいたのだ。
古参の戦士たちは、ランク問わず皆慌てて対策を練っているらしい。
「だったら普通の鍛錬じゃなくて、魔法に対する武器強化をした方がいいんじゃないか? 武器を改造してもらっている人も大勢いたぞ」
「対魔法の武器強化も、ある程度は必要だと思うよ。でもそこまで慎重になることもないと思ってる。所詮はもらった魔法を振りかざして無双している連中だもの。そんなの私の敵じゃないよ」
「お、おう……。さすが兄上は強いな」
「まあ、いざという時に力が発揮できないのは困るから、こうやって鍛錬してるけど。とはいえ、直前に付け焼刃の鍛錬をしてもあまり意味がないし、私たちはいつも通り過ごしていればいいと思うね。狂戦士モードになっちゃえば、魔法みたいなこともできるしさ」
風の刃のことだろうか。確かにそれは、通常時にはない特殊能力だ。
兄は更に続けた。
「それにお前、この間のトーナメント中に……ええと、チェイニーくん? との戦闘に備えて武器強化してたでしょ? あれで十分だよ。今更武器を強化してもらう必要はない。対策を練りたいなら他の人の死合いを見に行って、『ああ、相手はこんな風に戦うんだな』ってのを予習しておくのでいいと思うよ」
「なるほどな……。じゃあ、そいつらの死合いを見に行ってみるか。スケジュールを確認しておかないと……」
「そう言うと思って、さっきボックス席を予約してきたよ。明日の午前の死合いだけど、一緒に行こうか」
そう誘われ、アクセルはぱぁっと顔を輝かせた。
さすがに兄は、弟の考えることは全てお見通しだったようだ。
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