1940 / 2198

第1940話

「え、知ってたのか? いつの間に……」 「さっき郵便物を持ってきてくれた子に聞いたの。この間入って来た新人は魔法をバンバン使って来てヤバいから、フレイン様も気を付けた方がいいですよってさ」 「そ、そうか……。やっぱりもう噂になってるんだな……」  そういったきな臭い噂は、回るのも早い。だから武器屋があんなに混んでいたのだ。  古参の戦士たちは、ランク問わず皆慌てて対策を練っているらしい。 「だったら普通の鍛錬じゃなくて、魔法に対する武器強化をした方がいいんじゃないか? 武器を改造してもらっている人も大勢いたぞ」 「対魔法の武器強化も、ある程度は必要だと思うよ。でもそこまで慎重になることもないと思ってる。所詮はもらった魔法を振りかざして無双している連中だもの。そんなの私の敵じゃないよ」 「お、おう……。さすが兄上は強いな」 「まあ、いざという時に力が発揮できないのは困るから、こうやって鍛錬してるけど。とはいえ、直前に付け焼刃の鍛錬をしてもあまり意味がないし、私たちはいつも通り過ごしていればいいと思うね。狂戦士モードになっちゃえば、魔法みたいなこともできるしさ」  風の刃のことだろうか。確かにそれは、通常時にはない特殊能力だ。  兄は更に続けた。 「それにお前、この間のトーナメント中に……ええと、チェイニーくん? との戦闘に備えて武器強化してたでしょ? あれで十分だよ。今更武器を強化してもらう必要はない。対策を練りたいなら他の人の死合いを見に行って、『ああ、相手はこんな風に戦うんだな』ってのを予習しておくのでいいと思うよ」 「なるほどな……。じゃあ、そいつらの死合いを見に行ってみるか。スケジュールを確認しておかないと……」 「そう言うと思って、さっきボックス席を予約してきたよ。明日の午前の死合いだけど、一緒に行こうか」  そう誘われ、アクセルはぱぁっと顔を輝かせた。  さすがに兄は、弟の考えることは全てお見通しだったようだ。

ともだちにシェアしよう!