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第1942話
「よおぉし! 行くぜ!」
アロイスが気合いの雄叫びを上げる。それで会場の熱気も一緒に高まった。
――アロイス、頑張れ……!
アクセルも心の中で応援する。ドラコだか魔剣士だか知らないが、あんな新人に負けないで欲しい。
『死合い開始十秒前、九、八……』
ヴァルキリーのカウントダウンが始まった。会場も静かになり、独特の緊張感が漂い始める。アクセルも自然と手を握り締めていた。
『三、二、一……スタート!』
開始と共に、アロイスの闘気がぶわっと膨れ上がる。
早々に狂戦士モードに入ったのか、大剣を振り上げてドラコに斬りかかる。
「ぅおおおっ、りゃああぁ!」
だが大剣が振り下ろされる瞬間、今まで動かなかったドラコが鞘に入ったままの剣を掲げた。
大剣は見えない壁に阻まれるようにバチーンと弾かれ、いとも簡単に吹っ飛ばされて観客席まで飛んで行った。そして張られていた透明板にぶつかった。
「はっ……!?」
予想外の出来事に、アロイスもやや動揺している。
そんなアロイスに向けて、ドラコは素振りするように剣を振り下ろした。
振り下ろした剣からは巨大な火球が現れ、勝ち誇ったようにアロイスに向かって飛んで行った。
「な、なんのこれしき……っ!」
武器がなくなっても、徒手空拳で火球を止めようとするアロイス。
だが身の丈の三倍以上もある火球の勢いには勝てず、アロイスはそのまま火球に飲み込まれて壁際まで叩きつけられた。
ドカーン、と激しい爆発音が響き、会場全体が煙と爆風に覆われた。
「うわっ……!」
透明板に砕けた石や瓦礫の欠片が飛んでくる。一番高いボックス席にまでそんなものが飛んできて、アクセルは驚愕した。しばらくは身を伏せて、爆風と砂利をやり過ごすしかなかった。
こんな状況じゃ、死合い観戦どころじゃない。というか、火球が直撃したアロイスは無事では済まないんじゃ……。
「う……」
ようやく爆風が収まり、煙も切れてきた。
アクセルは恐る恐る顔を上げ、スタジアムの様子を覗き見た。
「え……?」
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