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第1944話

「あ、兄上……」  半分震えながら、兄を仰ぎ見る。 「こ、これどうなるんだ……? 腕しか残ってなかったら、アロイスは……?」 「……わからない。とにかく腕だけでも棺に入れてあげよう。運がよければ復活できるかもしれない」 「運がよければって……」 「こればかりは、身体がどこまで残っているかによるからね。ほとんど燃え尽きてしまっていたら、覚悟を決めるしかないよ」 「そんな……」  全身の血の気がさあっと引いていく。  死合いが始まる前はこんなことになるなんて思っていなかったから、覚悟も何も決めていなかった。  仮に負けるにしても、ちゃんと戦ってボロボロになりながらも食い下がって、それで力尽きるような展開を予想していたのに……なんだこの結末は。巨大な火球一発で腕以外の身体を溶かされて死ぬなんて、こんな死合いあっていいはずがない。  悔しくて涙が出そうになっていたら、背後から嘲笑するような声が聞こえてきた。 「あーあ、ダッサ。あんな強そうな鎧着て雄叫び上げてたくせに、一発でやられちゃうんだもんな。これがそこそこランクの高い戦士とか、笑えてくるぜ」 「……!」  ドラコだった。自分の金髪を掻き上げ、キザったらしくこちらを見据えてくる。  かあっと頭に血が上り、アクセルはつかつかと彼に歩み寄った。  殴りたい気持ちを懸命に抑えつつ、強めの口調で問いかける。 「きみな、こんな方法で勝利して恥ずかしくないのか? 魔法を使うにしても、もっと威力を抑えるとか会場を巻き込まないとか、やり方はいくらでもあったじゃないか」 「はぁ? そんなのあんたに言われる筋合いないんですけど? ここでは勝った方が正義なんだろ? 誰にも文句は言わせないね」 「だからって、こんなの戦士の死合いじゃないだろ。魔法を使えない相手を容赦なく消し飛ばすとか、人としてどうかと思うぞ」 「そんなの知りません~。消し飛ばされた方が悪いんです~。ヴァルキリーからも反則判定は受けてないし、問題ないと思います~」 「っ……」

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