1946 / 2197

第1946話

「言っておくけど、私もうちの弟も、きみとは比べ物にならないくらいランクが高いんだ。これ以上反抗的な態度をとるようなら、きみの身体をズタズタに切り刻んで火山に投げ込んでやるけど、それでもいいかな?」  そこでようやくドラコは顔を青くし、よろよろと這いつくばうように後退した。  そして腕を押さえながら立ち上がり、捨て台詞を吐いた。 「お……覚えてろよっ!」  自分の武器を回収するのも忘れ、すたこらサッサと逃げていく。その姿があまりに無様で、スカッとするのを通り越して呆れてしまった。  ――あんなヤツに負けたんじゃ、アロイスも浮かばれないな……。  今までのやり取りを見る限り、どうやら魔剣士は本当に与えられた魔法で無双しているだけのようだ。メンタルもフィジカルも普通の戦士の足元にも及ばず、本来ならヴァルハラに招待すらされないレベルの人材に見える。 「……いろいろと恥ずかしい連中だな。ヴァルキリーたちも、もう少し魔法を与える相手を選べばいいものを」 「ヴァルキリーの仕事はいつも杜撰だからね。とはいえ、こうやってたくさんの戦士に実害が出ている以上、クレームは必須かな。……お前はお友達を棺に入れておいで」  アクセルはスタジアムから出て、速足で棺に向かった。  兄は世界樹(ユグドラシル)からヴァルキリーの館に向かい、魔剣士のやり口について抗議しに行ったみたいだ。  一番回復力の高い棺に片腕だけ入れ、一生懸命お祈りしながら蓋を閉じる。  ――アロイス……どうか無事復活してくれ……!  復活できたら、きみの好きな豆のスープを鍋いっぱいに作って持って行くよ。木材を切りに行くのも手伝うし、馬鹿みたいな鍛錬にも付き合うよ。  だから、これでお別れなんて言わないでくれよな……。  泣きたくなるのを何とか堪え、アクセルはオーディンの館を出た。  家まで帰る途中、偶然ジークに遭遇した。一対一で会うのは久しぶりかもしれない。

ともだちにシェアしよう!