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第1947話
「あ……ジーク様、こんにちは」
「あー……っと、弟くんか。ちょうどよかった、ちょっと俺に付き合わないか?」
「……はい? いいですけど、一体何の用で……?」
「まあまあ、いいから来てくれ。絶対に悪いようにはしないからよ」
もう少しで家が見えるところだったのに、ジークに連れられて市場近くまで来てしまう。一体何の用なのだろう。
「あの、ジーク様……」
「普通に会話してるフリしてくれ。……お前さん、つけられてるぞ」
「えっ……!?」
言われて周囲を見回しそうになったが、すんでのところで堪える。
アクセルは怪しまれないように前を向いたまま、ジークに尋ねた。
「つけられてるって、一体誰が……」
「あの出で立ちは魔剣士どもだな。人数は……三人くらいか? お前さん、何か目をつけられるようなことしたのか?」
「ああ……それなら多分さっきの死合い後に……」
アクセルは簡単に事情を説明した。
するとジークは納得したように軽く首を振った。
「なるほどな、そりゃドラコとかいう魔剣士が悪いわ。上位ランカーにそんな態度とって、命があっただけでもありがたいと思わんと。ランゴバルトだったら文字通り首飛んでたぜ」
「ですよね……。でもドラコは、兄上に説教されたこと自体が気に入らなかったみたいで」
「ホントにしょうもねぇ連中だな。あんなのにヴァルハラを荒らされてるのかと思うと、胸糞悪くなってくるわ」
と、ジークが苦い顔をする。
「それはともかく、つけられてるならちゃんと巻いて帰らんとダメだぜ。家の場所を知られたら、何をされるかわからないからよ」
「何って……一体何をするつもりなんです?」
「そりゃお前、夜中に魔法で家に火をつけるとか、ペットのうさぎちゃんを狙うとか、やれることはいろいろあるだろ」
「えっ!?」
今度こそ本気で目を剥いてしまった。
アクセルはふるふると首を振りつつ、ジークに言った。
「そんな……いくら何でもそこまでは……」
「わからんぞ。何せあいつらは見境ないからな。突然身に余る力を手に入れたから、ここぞとばかりに調子に乗ってるんだ」
「それはそうですが……」
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