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第1948話

「ヴァルキリーのお墨付きもあるから、ランク関係なくやりたい放題やってるんだよな。道理でみんな対魔法の武器強化をしてもらうはずだぜ」 「…………」 「それはそれとして、今から撒くぞ。走るからついて来な」 「えっ……!? ちょ……ジーク様、待ってください」  ジークが軽快に走り出したので、アクセルも急いでそれを追いかけた。  市場を抜け、住宅街をぐるぐると走り回り、世界樹(ユグドラシル)の前を通り過ぎ、山の麓までやってくる。  そこでようやくジークが足を止めた。 「で、どうよ? あいつらまだ追いかけてくるか?」 「ええと……」  後ろを振り返ってみたが、魔剣士と思しき者の姿は見えなかった。  念のため周辺を探索してみたが、どこかに隠れている様子もなさそうだった。 「大丈夫そうです」 「ならよかったな。これで家に帰ってもひとまず安心かね」 「ありがとうございます、ジーク様。あのまま気付かず帰宅してたら、エラい目に遭ってました」 「まあ、あいつら体力ないからちょっと走ればすぐに撒けるとは思うが……今後は気を付けろよ? わざと遠回りして帰るってのもひとつの手かもしれんぞ」 「はい」  ジークに念を押され、アクセルは気を引き締めた。自分はつい危機意識が薄くなってしまうから、帰り道も油断しないようにしないと……。 「それにしても弟くん、随分体力ついたな? ここまで走ってきても全然息切れてないじゃないか」 「え? ああ……そう言えばそうですね」 「毎日頑張ってるんだな。そういやトーナメントでケイジとの決勝戦見てたけど、敵わないまでも一生懸命食らいついてたじゃないか。ケイジ相手にあそこまで戦えるのは大したもんだ。俺もいつかお前さんと死合ってみたいな」 「あ、ありがとうございます。これからも頑張ります」  嬉しくなり、アクセルは思わず笑みをこぼした。兄以外の上位ランカーに褒められるのは、いつもとは違った満足感がある。 「ま、それより先に魔剣士どもをどうにかするのが先だけどな。このままじゃ、呑気に死合いもしていられん」 「はい……」

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