1949 / 2197

第1949話

「とはいえ、ヴァルキリーどもが与えたのが攻撃魔法だけでよかったぜ。追尾する系の魔法を与えていたら、走って撒くのも意味がなかった」 「確かにそうですよね。あいつらの魔法って、こう……燃料切れになることってないんでしょうか?」 「あると思うが、詳しいことはわからん。魔法は俺たちの専門外だからな」 「……そうですか。そしたら詳しい人に聞くしかないかな……」  アクセルの頭にバルドルの姿が思い浮かんだ。  彼なら高名な神だし、魔法の知識もあるだろうからいろいろ教えてくれるかもしれない。近いうちに手土産を持って訪ねてみよう。 「そんじゃ、気を付けて帰れよ」  そう言ってジークは、街中に戻ってしまった。  アクセルは念のため山道をぐるっと歩き、遠回りして家まで帰った。 「ぴー♪」  ベランダから家に入った途端、ピピが「おかえり」と言わんばかりにすっ飛んできた。  もふもふの身体を撫でつつ、アクセルはピピに聞いてみた。 「なあピピ、この辺を変な戦士がうろついていなかったか? こう……魔法の武器を持っていそうな連中さ」 「ぴ……?」 「どうやらそいつら、うちを探してるみたいなんだ。兄上にお説教された腹いせに何かしようとしてるんだろうけど……万が一何かあったら大変だから、危なそうだったらすぐ逃げるんだぞ? 戦おうとか考えなくていいからな」 「ぴー……」 「ほら……ピピの好きな硬い木材、それをくれたアロイスっていただろ? アロイス、その魔剣士にやられちゃって今は棺の中にいるんだ。しかも復活できるかどうかもわからない状況でさ……。もう誰にもそんな目に遭って欲しくないから、ピピも気を付けてくれ。何ならしばらく山に帰ってても構わないぞ。ベランダにいたら目立っちゃうからな」 「ぴ……」  するとピピは、こちらに寄り添うようにたどたどしくこう言った。 「ピピ、へいき。ピピ、みみいいから、へんなひとすぐわかる。へんなひと、きたらアクセルにおしえてあげる」 「本当か? それは頼もしいな。さすがピピだ」 「ぴー♪」

ともだちにシェアしよう!