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第1950話
「じゃあ、変なヤツが近づいて来たら教えてくれ。ただし、無理はしないようにな」
そう言ったら、ピピは「うんうん」と頷いてくれた。
ぼちぼち昼食でも作るかな……とキッチンに入ったら、ようやく兄が帰ってきた。どこか浮かない顔をしている。
「おかえり兄上。どうだった、クレームの方は?」
「いやもう全然ダメ。何を言っても『戦士の勧誘は我々の一存です』の一点張りで、全然話にならなかったよ」
「ええ……? 何だそれ?」
「要するに、『誰をヴァルハラに連れて来るかはこっちが決めることだから、お前たちは口を出すな』ってことだよね。『いい加減にしないと斬るよ』って脅しても、あまり効果なかったし。埒が明かないから途中で帰って来ちゃった」
「……それは確かにひどいな。最初からクレームは受け付けませんって言ってるようなものじゃないか」
「まったく……ヴァルキリーも何考えてるんだろうね。あんな無法者たちがランク上位になったら、困るのはヴァルキリーも同じなのに」
「確かに……」
ヴァルキリーたちは今の上位ランカーを何とかしたくて、新人戦士に魔法を与えた。
新人たちはヴァルキリーの期待通り、魔法を駆使してトントン拍子にランクを駆け上がっている。
けれどそれで上位ランカーを一掃できたとして、次に困るのはヴァルキリーたちではないのか。
ヴァルキリーからすれば、今の上位ランカーは文句が多くて言うことを聞かないのかもしれないが、それは魔剣士たちも同じことだ。あんな風に上位ランカーをコケにするような連中が、ヴァルキリーの言うことを聞くはずがない。
兄はレモン水で水分補給をしつつ、言った。
「今度は私一人じゃなく、上位ランカー数名で乗り込んでみるよ。そしたらヴァルキリーもビビって考えを改めるかもしれない」
「……だといいけどな。ところで俺、近いうちにバルドル様に会いに行こうと思うんだけど一緒に行かないか? 魔剣士の魔法について、いろいろ教えてもらいたくてさ」
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