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第1957話

「お前、さっき魔剣士に後をつけられていたって言ってたでしょ。だとしたら、悠長なこと言ってる場合じゃないよ。家を特定されて、深夜に焼き討ちでもされたらどうするのさ。私もお前も、ピピちゃんだって全員死んじゃうかもしれないんだよ。それでもいいの?」 「よくない! けど……」 「だったら友人の一人くらい腹を括りなさい。アロイスくんだって、お前の役に立てるんだったら喜んで力を貸してくれるでしょう」  そう言って席を離れようとする兄・フレイン。  兄の言うこともわからんではなかったが、それでもアクセルは納得できなかった。 「それでも嫌だ! アロイス本人がいいって言ったならともかく、勝手にアロイスを利用するのは嫌だ!」 「お前ねぇ……」 「何でそんな冷たいこと言えるんだよ! アロイスは俺の数少ない友人なんだ! それを『一人くらい腹を括れ』ってひどすぎるだろ! そんな兄上、大嫌いだ!」 「はあ……? お前、それはちょっと……。私は、うちの家族に危害が加えられないよう最善の選択肢を選んでいるだけで」 「全然最善じゃない! 兄上は身内以外に冷たすぎる! 確かに家族は大事だけど、だからって友人を捨てるような真似はしたくない!」 「じゃあお前、他に代案があるの? 魔剣士の武器を持ってくるのは不可能なのに、どうするつもり? ロクな考えもないくせに、感情だけで反対するんじゃないよ」 「っ……で、でも」 「おい、いい加減にしろ」  その時、ホズがバン、とテーブルを叩いた。 「兄弟喧嘩は余所でやれ。兄上に見苦しいものを見せるな」 「す、すみません……」 「まあ、魔法で死んだ戦士の一部がいいなんて言った私も悪かったよ。友達を思うアクセルも、家族を思うフレインも、どっちも間違ってない。だからこれ以上喧嘩しないで」  と、バルドルもフォローしてくれる。 「魔法で壊された建物の瓦礫を持ってきてくれたら、ちゃんと魔法の供給源を特定してあげるよ。精度は落ちるけど、お友達を使う・使わないで揉めるよりいいでしょう。帰ったら壊れたスタジアムの瓦礫でも拾って、またうちに持っておいで」 「は、はい……」

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