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第1959話
「は、はい……」
アクセルは言われるままに頷いた。
――でも、そうだよな……。家族が大事っていうのは、俺も同じだし……。
もし兄・フレインと友人、どちらか一方しか助けられないという状況に陥ったら、自分も兄を選んでしまうと思う。罪悪感は覚えながらも、きっと兄の方を優先してしまう。
今回は選ぶ余地があったから喧嘩になってしまったけれど、究極の選択を迫られる場面になったら、きっとアクセルは兄と同じ道を選択するだろう。
そういう意味では、自分に兄を批判する資格はないのかもしれない……。
「さ、帰るよ。迷子にならないように、しっかりついておいで」
「わ、わかってるよ……」
兄のマントの端っこを掴み、引っ張られるように兄の後ろをついていく。
別にそんなことしなくても迷うことはないのだが、今は何となく兄と繋がっていたい気分だったのだ。
無事にヴァルハラに戻ってきたのだが、さて家に帰ろう……と歩き出した途端、何やら遠くで騒ぎになっているのが聞こえた。中堅ランカーが多く住んでいる住宅街の方だ。
「……なんだ? 何かあったのか?」
「何か嫌な予感がするなぁ……ちょっと行ってみようか」
走って騒ぎになっているところまで向かう。
近づくにつれて、何かが燃えるような焦げくさい臭いが漂ってきた。建物が崩れるような音も聞こえ、同時に複数の悲鳴や呻き声も聞こえてくる。
「な……!?」
現地の状況を目の当たりにしたら、思わずその場で固まってしまった。
中堅ランカーの住宅街だったそこは、爆弾でも落とされたのかというくらいひどい有様だった。
住宅だった建物は軒並み壊され、瓦礫や鉄筋が周囲に散乱し、クレーターのように地面が抉れているところもある。
崩れた建物の下敷きになっている戦士もいれば、鉄筋に凭(もた)れるようにして死んでいる戦士もいた。生き残っている戦士も皆どこかしら負傷しており、腕が千切れたり脚がなくなったりしている者もいる。
それを下位ランカーと思しき戦士が、せっせと救助活動を行っているところだった。
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