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第1960話※
「な、何だこれ!? 一体何があったんだ!?」
「……これはひどいね。思いっきり焼き討ちされてるじゃないか」
「と、とにかく俺たちも手伝おう」
アクセルは急いで近くの戦士に手を貸し、担架まで運んであげた。
あまりに被害が大きいので救助自体も人手不足になっており、非番の上位ランカーも駆り出されている状況だった。
住宅街の一部には死傷者や担架、薬などの道具を集められている場所もあったが、そちらもなかなかにひどい状況だった。
手が足りていないせいで怪我をした戦士は自力で傷の手当てをしており、その横では死体が無造作に積み重ねられている。比喩でも何でもなく、本当に死体の山が出来上がっていた。棺に入れにいく手すらも足りていないらしい。
――ひどすぎる……本当に何があったんだ……?
こんなの、巨人族か何かが一斉地ならしでもしないと起こり得ない。少なくとも純粋な戦士の力だけでは無理だ。
考えたくないが、まさか魔剣士たちが住宅街に向かって魔法をぶっ放したのでは……いや、そんないくら何でもそんなことは……。
「……!」
次の負傷者を運んでこようと思った時、担架の近くで傷の手当てをしている者を見つけた。
見覚えのある背格好の人物は、アクセルの同期であり友人のチェイニーだった。
「チェイニー!? 無事だったのか……よかった」
「ああ、アクセルか……。うん、まあ命は助かったけど……」
「え……」
見れば、チェイニーの片腕は二の腕辺りで千切れてなくなってしまっていた。
身体の影に隠れてわからなかったが、もう片方の手と口で一生懸命傷口を縛っているところだった。
「ちょっと貸してくれ」
中途半端に結ばれていた布切れを取っ払い、持っていた紐をチェイニーの脇の下辺りでキツく縛ってやる。とりあえず、これで一時的な止血はできただろう。
「ありがとう。アクセルはいつでも優しいね」
「話はいいから早く泉に行こう! こんな傷放置しておいたら出血多量で死ぬぞ」
「残念、今は泉も満員でさ。止血だけして耐えてるけど、もしかしたら棺行きになっちゃうかもしれない……」
「そんな……」
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